2026年10月05日

胃腸科と消化器内科は、実は診療内容が大きく重なる科です。
両者の違いは、主に「守備範囲」にあります。
胃腸科は主に胃や腸といった消化管を診るのに対し、消化器内科は消化管に加えて肝臓・胆のう・膵臓まで含めた消化器全体を診療の対象としています。
近所に長く「胃腸科」を掲げる医院があり、駅前には新しく「消化器内科」のクリニックができた、というように名称の異なる医療機関が並んでいると、どちらを受診すればよいのか迷うのは自然なことです。
この2つの名称が併存しているのは、医療機関が掲げることのできる診療科名を定める制度に経緯があるためです。
名称が新しいか古いかということと、実際に受けられる診療の質が高いか低いかということは、別の問題です。
この記事では、次の3点を中心に解説します。
- 胃腸科・消化器内科・胃腸内科という3つの名称の関係と、それぞれの守備範囲の違い
- 自分の症状はどちらを受診すればよいかの目安
- 掲げている診療科名と医師の専門医資格の関係、医療機関を選ぶときに見ておきたいポイント
なお本記事は、診療科名の一般的な位置づけを説明するものであり、特定の医療機関の優劣を示すものではありません。
実際にどの診療科を受診すべきか、どのような検査が必要かは、診察のうえで医師が個別に判断します。
胃腸科・消化器内科・胃腸内科の違いを一目で比較
胃腸科・消化器内科・胃腸内科の違いは、結論から言うと「診る臓器の範囲」にあります。
胃腸科と胃腸内科は主に胃・腸などの消化管を診療の中心とし、消化器内科はこれに肝臓・胆のう・膵臓を加えた、消化器全体を診療の対象とします。
たとえば腹痛や胃もたれ、胸やけといった日常的な症状には、3つの科のいずれでも幅広く対応しています。
一方で、健康診断で肝機能の異常や脂肪肝を指摘された場合は、肝臓まで守備範囲に含む消化器内科が対応しやすい領域になります。
長年「胃腸科」の医院に通っている方が、その医院を今後も選び続けること自体は何の問題もありません。
名称の違いは診る臓器の範囲の違いであって、優劣を示すものではないという点を、まず押さえておくことが大切です。

胃腸科:胃・腸を中心に診る
胃腸科は、胃や腸といった消化管の症状を中心に診る診療科です。
腹痛、胃もたれ、胸やけ、吐き気、下痢、便秘、血便など、日常的に起こりやすいお腹の不調に幅広く対応しています。
「胃腸科」という名称は、長年にわたり地域のクリニックで使われてきた診療科名です。
そのため、近所で長く通いやすい医院として定着しているケースが多く見られます。
診る症状の幅は消化器内科と大きく重なっており、日常的な胃腸の不調であれば胃腸科でも十分に相談できます。
消化器内科:肝臓・胆のう・膵臓まで含めて診る
消化器内科は、胃腸科が診る消化管に加えて、肝臓・胆のう・膵臓までを守備範囲に含む診療科です。
食道から胃、十二指腸、小腸、大腸までの消化管はもちろん、肝臓や胆のう、膵臓に関わる症状や検査値の異常も対応領域になります。
具体的には、健康診断で指摘されることの多い肝機能の数値異常や脂肪肝、みぞおちから背中にかけての痛みなど、肝胆膵に関わる可能性がある症状は、消化器内科の得意分野です。
もちろん、腹痛や胃もたれといった一般的な症状にも対応しており、胃腸科と重なる領域も幅広くあります。
胃腸内科:現行の制度で使われている名称
胃腸内科は、胃腸科と同様に胃や腸などの消化管を中心に診る診療科で、現在の制度のもとで新たに掲げることができる名称のひとつです。
診療内容の実質は胃腸科と近く、日常的なお腹の症状全般に対応しています。
「胃腸内科」「消化器内科」「内科・胃腸科」など、医療機関によって掲げ方はさまざまですが、いずれも消化管を中心とした診療を行っている点は共通しています。
名称の表記だけで診療内容を判断せず、気になる場合は各医療機関の診療案内を確認するとよいでしょう。
なぜ2つの名称が併存しているのか:診療科名の制度
「胃腸科」と「消化器内科」という2つの名称が併存しているのは、医療機関が広告できる診療科名を定める制度が見直されてきた経緯によるものです。
厚生労働省の資料によれば、医療機関が広告できる診療科名は医療法および医療法施行令に基づいて定められており、平成20年(2008年)4月1日に制度の見直しが行われました。
この見直しにより、「胃腸科」「消化器科」など、それまで単独の名称として広告できていた診療科名は、新たに広告することができなくなりました。
厚生労働省の通知によれば、代わりに「内科」「外科」などの基本となる診療科名に、「消化器」や「胃腸」といった臓器・部位を示す事項を組み合わせる形式に整理され、「消化器内科」「胃腸内科」といった名称が現行の制度で掲げられる名称となっています。
一方で、この改正には経過措置が設けられています。
厚生労働省の資料によれば、改正が行われた平成20年(2008年)4月1日より前から「胃腸科」を広告していた医療機関については、看板などの表示を新たに書き換えない限り、引き続き「胃腸科」の名称を使用することが認められています。
つまり、現在「胃腸科」を掲げている医療機関の多くは、制度の見直し以前から継続してその名称を使ってきた医療機関であるということです。
ここで大切なのは、「胃腸科という名称の医院は設備や知識が古いのではないか」と考えて受診先選びに迷う必要はないという点です。
名称が制度改正前からのものか、改正後の現行制度に基づくものかという違いは、あくまで広告に関する制度上の経緯によるものであり、実際の診療内容や医師の専門性とは別の問題です。
長年「胃腸科」を掲げてきた医院が、時代に応じて設備を更新し、専門的な知識を持つ医師が診療にあたっているケースは珍しくありません。
名称の新旧だけで医療機関の質を判断せず、気になる場合は各医療機関の診療内容や医師の経歴を確認することが、受診先選びの実務的なポイントになります。
症状別:どちらを受診すればよいか
腹痛や胃もたれ、胸やけといった日常的なお腹の症状の多くは、胃腸科・消化器内科・胃腸内科のいずれでも対応しやすい症状です。
そのうえで、症状の内容によっては、より適した診療科がある場合があります。
たとえば健康診断で肝機能の異常を指摘された場合や、内視鏡検査を希望する場合など、症状や目的によって選び方の目安が変わってきます。
以下では、代表的なケースごとに受診先の考え方を整理します。

胃・腸の症状が中心の場合
腹痛、胃もたれ、胸やけ、吐き気、下痢、便秘といった日常的なお腹の症状には、胃腸科・消化器内科・胃腸内科のいずれでも幅広く対応しています。
どの科を受診しても、まずは症状を確認したうえで必要な検査や治療の方針が検討されます。
このような症状の場合は、名称よりも通いやすさや相談のしやすさを基準に選んでよいでしょう。
長年通っている近所の医院があるなら、そのまま相談することも一つの選択肢です。
肝臓・胆のう・膵臓に関わる可能性がある場合
健康診断で肝機能の数値異常(AST・ALT・γ-GTPなど)や脂肪肝を指摘された場合、皮膚や白目が黄色くなる黄疸(おうだん)が見られる場合、あるいはみぞおちから背中にかけて抜けるような痛みを感じる場合は、肝臓・胆のう・膵臓まで守備範囲に含む消化器内科が対応しやすい領域です。
こうした症状は、必ずしも重い病気を意味するわけではありませんが、消化管以外の臓器が関わっている可能性があるため、肝胆膵領域を診療対象に含む診療科で相談すると、必要な検査につながりやすくなります。
気になる症状や検査値がある場合は、早めに相談することをおすすめします。
胃カメラ・大腸カメラを受けたい場合
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)や大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)を受けたい場合は、診療科の名称そのものよりも、その医療機関が内視鏡検査に対応しているかどうかを確認するのが確実な方法です。
「胃腸科」「消化器内科」「胃腸内科」のいずれを掲げていても、内視鏡設備の有無や検査体制は医療機関によって異なります。
ホームページの診療案内や検査案内のページで、内視鏡検査の実施状況や予約方法を確認してから受診先を決めるとよいでしょう。
診療科名と医師の専門医資格は別のもの
医療機関が掲げている診療科名と、そこで診療する医師が持つ専門医資格は、別のものとして考える必要があります。
掲げている科名は医療法に基づく届出上の名称であり、専門医資格は各学会が定める研修・試験を経て認定される資格です。
消化器の領域には、一般財団法人日本消化器病学会が認定する消化器病専門医や、一般社団法人日本消化器内視鏡学会が認定する消化器内視鏡専門医といった制度があります。
これらの資格を持つ医師が診療にあたっているかどうかは、医療機関のホームページにある医師紹介ページで確認できる場合が多くあります。
ただし、こうした専門医資格がなければ診療を受けられない、というわけではありません。
資格の有無はあくまで医師の経歴や専門性を確認する一つの材料であり、医療機関を選ぶ際の判断材料の一つとして参考にするとよいでしょう。
診療科名の表記だけでなく、医師の経歴や専門医資格もあわせて確認すると、より納得したうえで受診先を選びやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 胃腸科と消化器内科で、受けられる検査に違いはありますか?
診療科名の違いそのものが検査内容を決めるわけではありません。
胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査に対応しているかどうかは医療機関ごとに異なるため、受診前にホームページなどで検査体制を確認することをおすすめします。
Q. 「胃腸科」を掲げている医院は今も受診できますか?
受診できます。
制度の見直し以前から「胃腸科」を掲げてきた医療機関は、経過措置により引き続きその名称を使用することが認められています。
名称の新旧と診療内容の質は別の問題です。
Q. 胃腸内科と胃腸科は同じですか?
胃腸内科と胃腸科は、いずれも胃や腸などの消化管を中心に診る点で診療内容が近い名称です。
胃腸内科は現行の制度で新たに掲げることができる名称、胃腸科は制度改正前から使われてきた名称という位置づけの違いがあります。
Q. 健康診断で肝機能異常を指摘されました。どちらを受診すべきですか?
肝臓は消化器内科の守備範囲に含まれるため、消化器内科への相談が対応しやすい選択肢になります。
気になる数値がある場合は、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
Q. 内科・胃腸科と併記されている場合はどう考えればよいですか?
「内科・胃腸科」のように複数の診療科名を併記している医療機関は、一般内科の症状と胃腸の症状の両方に対応していることを示しています。
具体的にどこまで対応しているかは、各医療機関の診療案内で確認するとよいでしょう。
まとめ
胃腸科と消化器内科は診療内容が大きく重なる科であり、違いは主に守備範囲にあります。
胃腸科・胃腸内科は主に胃や腸などの消化管を、消化器内科はこれに肝臓・胆のう・膵臓を加えた範囲を診療の対象としています。
2つの名称が併存しているのは、医療機関が掲げられる診療科名を定める制度が見直されてきた経緯によるものであり、名称の新旧が診療の質の違いを意味するわけではありません。
腹痛や胃もたれといった日常的な症状はいずれの科でも対応しやすく、健康診断で肝機能異常を指摘された場合は消化器内科を、内視鏡検査を希望する場合は各医療機関の対応状況を確認したうえで受診先を選ぶとよいでしょう。
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。
症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
参考文献
厚生労働省 広告可能な診療科名の改正について(平成20年3月31日医政発第0331042号)
監修者情報
板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニック 院長
佐藤公紀(さとう こうき)医師
資格・所属学会
- 医学博士(画像診断治療学)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医
- 総合内科専門医
- 難病指定医
略歴
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、社会福祉法人三井記念病院で初期研修・消化器内科医員、順天堂大学医学部附属順天堂医院で消化器内科医員を務める。
- 順天堂大学大学院医学研究科で医学博士(画像診断治療学)を取得し、三井記念病院消化器内科医長を経て板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニックを開院。
- これまでに1万例以上の内視鏡検査・治療を術者として経験している。