2026年10月05日

消化器内科が扱う病気は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸といった「消化管」の病気と、肝臓・胆のう・膵臓という「肝胆膵」の病気に大きく分かれます。
代表的なものには、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、胃潰瘍、ピロリ菌感染症、過敏性腸症候群、大腸ポリープ、脂肪肝、胆石症などがあります。
なかには内視鏡などの検査で異常が見つからないのに症状が続くタイプの病気もあり、こうした状態も学会の診療ガイドラインで定義された病気として扱われています。
この記事でわかること
- 消化器内科が扱う主な病気の臓器別一覧
- 自分の症状からどの領域の病気を疑えばよいかの目安
- それぞれの病気を調べるための検査と、検査で異常が見つからない場合の考え方
本記事は病気の一般的な情報を提供するものであり、自己診断を目的としたものではありません。
症状の原因や必要な検査は、診察のうえ医師が判断します。
消化器内科が扱う病気の全体像
消化器内科が扱う病気は、大きく分けると「消化管」の病気と「肝胆膵」の病気の2系統に整理できます。
口から肛門までひと続きの管である消化管と、消化を助ける肝臓・胆のう・膵臓とでは、現れやすい症状も調べ方も異なるためです。
消化管の病気は、さらに食道・胃・十二指腸・小腸・大腸に分かれます。
食道では逆流性食道炎、胃・十二指腸では機能性ディスペプシア・胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・ピロリ菌感染症、小腸・大腸では過敏性腸症候群・便秘症・大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎・クローン病が、日常診療で比較的よくみられる病気です。
食道がん・胃がん・大腸がんもこの領域に含まれますが、いずれも早期には症状が乏しいため、後述する検査や健診での発見が重要になります。
一方、肝胆膵の病気は、肝臓の脂肪肝・肝機能障害・ウイルス性肝炎、胆のうの胆石症・胆のう炎、膵臓の急性膵炎・慢性膵炎などが中心です。
これらは自覚症状が出にくく、健康診断の血液検査や腹部エコーで指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。
このように、消化器内科の病気は「どの臓器で」「どのような症状が出やすいか」という視点で整理すると全体像がつかみやすくなります。
次の章では、自分の症状から該当する領域を絞り込む方法を紹介します。

症状からどの領域を疑うか(逆引き表)
自分の症状がどの臓器の病気に関連しやすいかは、症状が現れる場所からある程度の見当をつけられます。
ただし、同じ症状でも複数の原因が考えられるため、この逆引きはあくまで「関連しやすい臓器」を把握するための目安であり、診断そのものではありません。
代表的な症状と、関連しやすい臓器・病気の例は次のとおりです。

たとえば、胃もたれと便通の乱れが同時に続く場合、胃・十二指腸の領域と小腸・大腸の領域の両方に目を向ける必要があるかもしれません。
症状の組み合わせから複数の領域が疑われることも珍しくないため、気になる症状が続くときは自己判断で絞り込みすぎず、診察を受けて確認することをおすすめします。
食道の病気
胸やけや酸っぱいものが上がってくる感じ(呑酸)、食べ物の飲み込みにくさが続く場合、まず疑われるのは食道の病気です。
なかでも代表的なのが、胃の内容物が食道に逆流することで炎症や症状を起こす逆流性食道炎(胃食道逆流症)です。
日本消化器病学会の「患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド2023」[1]では、逆流性食道炎は加齢や食生活、肥満などさまざまな要因が関係して起こる、比較的頻度の高い病気として説明されています。
症状の程度は個人差が大きく、軽い胸やけ程度で済む場合もあれば、睡眠や食事に支障が出るほど症状が強く出る場合もあります。
なお、食べ物の飲み込みにくさが徐々に強くなる、体重が理由なく減るといった変化が続く場合には、食道がんなど他の病気が背景にある可能性も否定できません。
頻度としては逆流性食道炎の方がはるかに多いものの、症状が長引く、あるいは悪化する場合は、自己判断で様子を見続けず、内視鏡検査を含めて医療機関へ相談することをおすすめします。
胃・十二指腸の病気
みぞおちの痛みや胃もたれが続く場合は、胃・十二指腸の病気が関連していることがあります。
代表的なものに、胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍といった粘膜に傷や炎症ができるタイプの病気と、ピロリ菌の感染に関連する病気があります。
胃がんもこの領域に含まれますが、早期には自覚症状がほとんどないため、症状の有無だけで自己判断しないことが大切です。
胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃炎は胃の粘膜に炎症が起こった状態、胃潰瘍・十二指腸潰瘍は粘膜がより深く傷つき、へこんだ状態を指します。
いずれも、みぞおちの痛みや胃もたれ、食欲不振といった症状が現れることがありますが、自覚症状がほとんどないまま潰瘍が進行しているケースもあれば、粘膜の変化が軽微であっても強い痛みを感じるケースもあります。
このように、症状の強さと実際の粘膜の状態は必ずしも一致しません。
こうした病気の有無や程度は、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で粘膜の状態を直接確認することで調べられます。
症状が続く場合は、市販薬で様子を見続けるのではなく、内視鏡検査による確認を検討する価値があります。
ピロリ菌感染症
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に感染する細菌です。
感染すると胃の粘膜に慢性的な炎症が起こりやすくなり、胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍、さらには胃がんとの関連が指摘されています。
感染しているかどうかは、内視鏡検査時の組織診断のほか、血液・尿・便・呼気を用いた検査など複数の方法で調べられます。
感染が確認された場合、胃がんリスクの低減などを目的に除菌治療を行うことが一般的ですが、具体的な治療スケジュールや薬の選択については、胃の粘膜の状態を踏まえて医師と相談して決定します。
除菌によってすべての症状が解消されるとは限らないため、検査を受けたうえで担当医と相談しながら方針を決めることが大切です。
小腸・大腸の病気
下痢や便秘、お腹の張りが続く場合は、小腸・大腸の病気が関連していることがあります。
機能性の病気である過敏性腸症候群や便秘症のほか、大腸の粘膜にできる大腸ポリープ、慢性的な炎症が続く潰瘍性大腸炎・クローン病などが代表的です。
大腸がんもこの領域に含まれますが、早期には症状が乏しいことが多く、検診による発見が重要な役割を果たします。
過敏性腸症候群のように検査では異常が見つからないタイプの病気については、後の章であらためて詳しく取り上げます。
大腸ポリープ
大腸ポリープは、大腸の粘膜の一部が盛り上がってできる隆起性の病変です。
多くは良性ですが、種類や大きさによっては、時間の経過とともに大腸がんに進行する可能性があるものも含まれます。
自覚症状がないまま見つかることがほとんどで、大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)によって発見されます。
検査でポリープが見つかった場合、その場で経過観察とするか切除を検討するかは、大きさや形、組織の性質などをもとに医師が判断します。
切除が必要かどうか、いつ行うかについては個人差が大きいため、検査結果を踏まえて担当医と相談することが重要です。
潰瘍性大腸炎・クローン病(炎症性腸疾患)
潰瘍性大腸炎とクローン病は、いずれも腸に慢性的な炎症が繰り返し起こる病気で、まとめて炎症性腸疾患と呼ばれます。
腹痛や下痢、血便などの症状が長期間にわたって続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。
これらの病気は原因がまだ十分に解明されておらず、指定難病に含まれています。
症状の程度や炎症の範囲には個人差があり、治療方針も一人ひとりの状態に応じて医師が判断します。
詳詳しい病気の説明や医療費助成制度については、難病情報センター[2]の情報も参考になります。
下痢や腹痛、血便が長引く場合は、単なる体調不良と自己判断せず、早めに消化器内科を受診することをおすすめします。
肝臓・胆のう・膵臓の病気
肝臓・胆のう・膵臓の病気は、自覚症状が出にくいことが大きな特徴です。
多くの場合、痛みやだるさなどの症状が出るのは病気がある程度進んでからで、それ以前の段階では健康診断の血液検査や腹部エコー検査で偶然指摘されて気づくケースが少なくありません。
代表的なものに、脂肪肝・肝機能障害、胆石症、膵炎があります。
脂肪肝・肝機能障害
脂肪肝は、肝臓の細胞に脂肪が過剰にたまった状態です。
健康診断の血液検査でAST・ALT・γ-GTPといった項目の数値上昇として指摘されたり、腹部エコー検査で肝臓が白っぽく描出されたりすることで見つかるのが一般的です。
厚生労働省の生活習慣病予防に関する情報サイト(e-ヘルスネット)[3]では、脂肪肝は過食や運動不足、飲酒などの生活習慣と関連が深いことが紹介されています。
自覚症状がないまま進行することも珍しくないため、健診で指摘を受けた場合は「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、一度消化器内科を受診し、生活習慣の見直しや追加検査の必要性について確認することをおすすめします。
胆石症・膵炎
胆石症は、胆のうや胆管に結石ができる病気で、右上腹部の痛みや、食後にみぞおちから右わき腹にかけて重苦しさを感じることがあります。
膵炎は膵臓に炎症が起こる病気で、みぞおちの痛みが背中に抜けるように感じられることが特徴のひとつとされています。
いずれも、腹部エコー検査や血液検査(膵酵素の値など)で炎症や結石の有無を調べることができます。
痛みが軽くても検査で異常が見つかることもあればその逆もあり、症状の強さは病状の程度と必ずしも一致しません。
右上腹部やみぞおちの痛みが繰り返し起こる場合は、早めに検査を受けて原因を確認することが望ましいといえます。
検査で異常が見つからないのに症状が続く病気
「検査を受けたが異常がないと言われたのに、症状だけが続いている」——これは、消化器内科を受診する方によくみられる経験です。
結論からいえば、これは気のせいでも見落としでもない可能性があります。
内視鏡などの検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず症状が続く状態は、学会の診療ガイドラインで定義された、れっきとした病気として扱われているためです。
代表的なのが機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群です。
機能性ディスペプシアは、胃もたれやみぞおちの痛みが続くにもかかわらず、内視鏡検査で胃炎や潰瘍などの明らかな異常が見つからない状態を指します。
日本消化器病学会の「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(改訂第2版)」[4]では、この病気は検査で異常が見つからないことをもって否定されるものではなく、症状そのものに基づいて診断される独立した病気として位置づけられています。
同様に、過敏性腸症候群も、大腸カメラなどの検査で炎症やポリープなどの異常が見つからないまま、下痢や便秘、腹痛が続く状態として知られています。
つまり、「検査で異常なし」という結果は「潰瘍やがんといった目に見える構造上の病変(器質的疾患)が見つからなかった」ことを意味するのであって、「症状の原因が存在しない」「気のせいである」ということではありません。
以前に検査を受けて異常がないと言われた経験がある場合でも、その後も症状が続いている、あるいは変化しているのであれば、症状の内容や経過をあらためて伝えたうえで対応を相談する価値があります。
診断がつけば、症状に応じた向き合い方を医師と一緒に検討できるようになります。
病気を調べるための検査
これまで紹介してきた病気の多くは、症状だけで診断を確定することはできず、実際に検査を行って初めて確認できます。
消化器内科で行われる代表的な検査には、血液検査、腹部エコー検査、胃カメラ、大腸カメラ、便潜血検査があり、それぞれ調べられる領域が異なります。

たとえば、胸やけが続く場合は胃カメラで食道・胃の粘膜を確認し、下痢や便通異常が続く場合は大腸カメラで大腸の粘膜を確認するというように、疑われる領域に応じて検査を組み合わせるのが一般的です。
近年は、鎮静剤を使用して苦痛の少ない内視鏡検査を行う医療機関も増えていますが、どの検査をどのタイミングで行うかは、症状の内容や経過をふまえて医師が判断します。
健康診断での指摘から見つかる病気
自覚症状がなくても、健康診断をきっかけに消化器の病気が見つかることは少なくありません。
代表的なパターンとして、便潜血検査で陽性が出た場合、血液検査で肝機能の数値異常を指摘された場合、腹部エコーで肝臓・胆のう・膵臓などに所見が見つかった場合の3つが挙げられます。
国立がん研究センターの「大腸がん検診について」[5]によれば、便潜血検査は大腸がん検診の一次検査と位置づけられており、陽性の場合は精密検査として大腸カメラを受けることが推奨されています。
また、肝機能異常(AST・ALT等)や腹部エコーでの所見も、自覚症状のない脂肪肝や胆石症などを早期に発見する貴重な機会となります。
いずれの項目も、異常を指摘されたからといって直ちに重篤な病気を意味するわけではありませんが、精密検査を受けなければ原因を確定できません。
健診で指摘を受けた項目は、症状がないからと放置せず、必ず医療機関を受診してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 症状が複数の病気に当てはまる気がします。どうすればよいですか?
複数の病気に症状が当てはまるように感じるのは自然なことです。
無理に一つに絞り込もうとせず、いつから・どのような症状が・どの程度続いているかを整理したうえで、消化器内科を受診し、必要な検査を通じて確認することをおすすめします。
Q. 検査で「異常なし」と言われましたが、症状が続いています。
検査で異常が見つからないタイプの病気もあるため、「異常なし」がそのまま「原因不明」を意味するわけではありません。
症状が続く、あるいは変化している場合は、その経過を伝えたうえで、あらためて相談することをおすすめします。
Q. 消化器の病気はストレスと関係がありますか?
機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群など、一部の病気はストレスや生活リズムの乱れとの関連が指摘されています。
ただし、背後に炎症や腫瘍などの器質的な病気が隠れている可能性もあるため、ストレスのみが原因と自己判断せず、消化器内科を受診して原因を確認することが大切です。
Q. 健康診断で肝機能異常を指摘されましたが、自覚症状はありません。
肝臓の病気は自覚症状が出にくいことが特徴です。
数値異常を指摘された場合は、症状の有無にかかわらず、一度消化器内科を受診し、生活習慣の見直しや追加検査が必要かどうかを確認することをおすすめします。
Q. 家族に胃がん・大腸がんの人がいます。何をすればよいですか?
血縁者にがんの既往がある場合、検診の開始時期や頻度について個別に相談したほうがよいことがあります。
自己判断で様子を見るのではなく、消化器内科で家族歴を伝えたうえで、検査計画について相談することをおすすめします。
まとめ
消化器内科が扱う病気は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸という消化管の病気と、肝臓・胆のう・膵臓という肝胆膵の病気の2系統に大きく分かれます。
症状からある程度どの領域かの見当はつけられますが、同じ症状でも複数の原因が考えられるため、絞り込みすぎには注意が必要です。
また、検査で異常が見つからないタイプの病気も、学会のガイドラインで定義された病気として扱われています。
気になる症状が続く場合は、ネット上の情報だけで自己診断せず、消化器内科を受診して原因を確かめることをおすすめします。
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。
症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
参考文献
日本消化器病学会 患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド2023
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト(e-ヘルスネット)
日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)
国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん検診について
監修者情報
板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニック 院長
佐藤公紀(さとう こうき)医師
資格・所属学会
- 医学博士(画像診断治療学)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医
- 総合内科専門医
- 難病指定医
略歴
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、社会福祉法人三井記念病院で初期研修・消化器内科医員、順天堂大学医学部附属順天堂医院で消化器内科医員を務める。
- 順天堂大学大学院医学研究科で医学博士(画像診断治療学)を取得し、三井記念病院消化器内科医長を経て板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニックを開院。
- これまでに1万例以上の内視鏡検査・治療を術者として経験している。