2026年10月06日

大腸内視鏡検査を控えて、痛みへの不安を感じている方は少なくありません。
大腸内視鏡検査で感じる痛みは、主に内視鏡が腸の中を進む際に、腸の壁が押し伸ばされたり引っ張られたりすることで生じます。
そのため、虫垂炎や帝王切開などお腹の手術を受けたことがある方(腸と周囲の組織の癒着により腸の動きが制限されることがあります)、腹腔内の脂肪が少ない方、腸が長い・屈曲が強い方などは、痛みを感じやすいことがあります。
ただし、これらに当てはまるからといって必ず痛みを感じるわけではなく、感じ方には個人差があります。
検査の負担を減らすために最も有効で手軽な対処法は、過去のお腹の手術歴や過去の検査で苦痛を感じた経験を、予約時や事前の問診時に医師へ伝えておくことです。
この記事でわかること
- 痛みを感じやすいとされる人の特徴と、その理由
- 当てはまる場合に、予約時・問診時にどう伝えればよいか
- 過去の検査でつらかった経験を、次回にどう活かすか
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものです。
痛みの感じ方には個人差があり、以下に挙げる特徴に当てはまるからといって必ず痛みを感じるわけではありません。
検査の進め方や鎮静薬・鎮痛薬の使用については、診察のうえ医師が個別に判断します。
大腸内視鏡検査の痛みはどこから来るのか
大腸内視鏡検査で生じる痛みは、多くの場合、内視鏡が腸の中を進んでいく過程で腸そのものが引っ張られたり伸ばされたりすることによって起こるとされています。
腸は体の中で固定されている部分と、比較的自由に動く部分があり、内視鏡が通過する際にたわみやすい部分ほど、その動きが体に伝わりやすくなります。
大腸は腹部の中で複雑に曲がりくねった構造をしています。
スコープはこのカーブに沿って先端の角度を調整しながら進むため、曲がり角を通過する際に腸壁が自然と押されたり引っ張られたりして痛みが生じます。
このように、痛みが起こる原因の多くは「腸が押し伸ばされる」「カーブで腸壁が引っ張られる」という共通の仕組みによるものです。
痛みを感じやすいとされる人の特徴
痛みを感じやすいとされる要因はいくつか知られていますが、最初に押さえておきたいのは、これらに当てはまる場合でも、必ず痛みを感じるわけではないという点です。
感じ方には個人差が大きく、同じ要因を持つ方でも、負担なく検査を終える方は多くいます。
そのうえで、一般的に痛みを感じやすいとされる要因としては、お腹の手術を受けたことがある、腹腔内の脂肪が少ない、腸が長い・屈曲が強いといった体の側の特徴が挙げられます。
加えて、便が残っていて内視鏡が進みにくい場合や、過去の検査でつらかった経験から緊張が強まる場合にも、痛みを感じやすくなることがあるとされています。

お腹の手術を受けたことがある
過去にお腹の手術を受けた経験がある方は、痛みの原因となる「腸の癒着」が起こりやすいため、特に注意が必要とされています。
虫垂炎の手術、帝王切開、婦人科系の手術などを受けたことがある場合、手術した部位の周囲で腸と組織が癒着し、腸の動きが本来より制限されることがあります。
腸の動きが制限されていると、内視鏡が進む際に腸が伸びる方向に力が逃げにくくなり、その分だけ引っ張られる感覚を強く感じることがあるとされています。
ただし、癒着があるからといって必ず痛みを感じるわけではありません。
癒着の程度は人によって異なり、手術から時間が経っている場合や、癒着の範囲が小さい場合には、大きな影響が出ないこともあります。
手術を受けた時期や種類によって医師の対応も変わるため、この点は次の章であらためて取り上げます。
体格による違い
体格も、痛みの感じやすさに関わる要因の一つとされています。
腹腔内の脂肪が少ない(やせ型の)方は、内視鏡を押し進める際のクッションとなる脂肪が少ないため、腸が逃げてたわみやすく、圧力がそのまま腸壁へ伝わって痛みを感じることがあります。
反対に、腹腔内の脂肪が一定量あると、内視鏡の動きが周囲に分散されやすく、圧力を感じにくい場合もあるとされています。
これは体格の良し悪しを示すものではなく、あくまで腸の動きやすさに関わる一つの要因にすぎません。
やせ型であること自体が問題なのではなく、腸が動きやすい分、内視鏡の圧力を感じ取りやすいという仕組みの違いです。
腸の形や長さによる違い
腸の長さや曲がり方には、もともと個人差があります。
腸が長い方や、屈曲が強い部分がある方は、内視鏡がその部分を通過する際にたわみやすく、腸が引っ張られる感覚が生じやすいことがあるとされています。
また女性は、男性に比べて骨盤が広くS状結腸が骨盤内に落ち込みやすいため、屈曲(曲がりくねり)が強くなってスコープ通過時にたわみが生じやすい傾向があります。
これらはいずれも生まれ持った体の構造上の違いであり、優劣を示すものではありません。
医師は検査中、腸の形に応じて内視鏡の進め方や体位を調整しながら検査を進めます。
当てはまっても、必ず痛いわけではありません
ここまで紹介した要因は、あくまで「痛みを感じやすいとされる」傾向であり、当てはまる場合でも問題なく検査を終える方は多くいます。
痛みの感じ方には個人差が大きく、同じ手術歴や体格であっても、実際の感じ方は人によって異なります。
また、検査の進め方には調整の余地があります。
内視鏡の進め方や空気の送り方を工夫することで負担を軽くできる場合があり、鎮静薬・鎮痛薬の使用によって緊張や痛みを和らげることが期待できる場合もあります。
どの方法が適しているかは、体格や既往歴、当日の状態を踏まえて医師が個別に判断します。
要因に当てはまるからといって、検査そのものを過度に恐れる必要はありません。
次の章では、当てはまる場合に読者自身が実行できる、具体的な対処を紹介します。
当てはまる場合、事前にできること
痛みを感じやすい要因に心当たりがある場合、最も有効で確実な対処法は、その情報を予約時や事前の問診時に医療機関へ伝えておくことです。
具体的には、次の点を伝えておくと、検査の進め方を調整してもらいやすくなります。

手術歴と過去の経験は「いつ・何が」まで伝える
手術歴を伝える際は、「お腹の手術をしたことがある」というだけでなく、いつ・どの手術を受けたかまで伝えることが判断材料になります。
例えば「20代のときに虫垂炎の手術を受けた」「帝王切開で出産した、時期は〇年前」というように、時期と手術の種類を具体的に伝えると、癒着の可能性や程度を推測する材料になります。
同様に、過去に大腸内視鏡検査を受けたことがある場合は、そのときの経験もあわせて伝えておくとよいでしょう。
詳しい伝え方は、後の章であらためて紹介します。
鎮静薬・鎮痛薬について相談する
痛みへの直接的な対処として、鎮静薬・鎮痛薬の使用を相談する方法があります。
使用することで、検査中の緊張や痛みが和らぐことが期待できる場合があります。
一方で、鎮静薬・鎮痛薬を使用した場合は、検査後に一定時間の休息が必要となり、当日は終日、自動車・バイク・自転車などの運転が禁止される点に注意が必要です。
使用するかどうか、どの程度の量にするかは、体格や既往歴、当日の体調を踏まえて医師が個別に判断します。
日本消化器内視鏡学会によれば、内視鏡診療における鎮静については学会としての指針が示されており、安全性に配慮した実施が求められています。
鎮静・麻酔の具体的な種類や流れについては、別記事で詳しく解説しています。
前処置をしっかり行う
前処置とは、検査前に腸の中をきれいにするための準備のことです。
腸内に便が残っていると内視鏡が進みにくくなり、結果として痛みや負担が増えることがあるとされています。
反対に、腸内がきれいな状態であれば、内視鏡がスムーズに進みやすくなり、負担の軽減につながることがあります。
指示された下剤の服用方法や、前日・数日前からの食事制限を正しく守ることは、受診される方ご自身が事前にできる最も重要な準備の一つです。
前日の食事の注意点については、別記事で具体的に紹介しています。
過去の検査でつらかった経験がある方へ
過去に大腸内視鏡検査を受けてつらい思いをした経験がある場合、その経験は次回の検査に活かすことができます。
過去につらい検査の経験があったとしても、そのことを我慢して黙っておく必要はまったくありません。
具体的には、前回の検査でどのあたりが痛かったか、痛みがどのくらいの時間続いたか、鎮静薬を使ったかどうか、途中で検査が中止になったことがあるかどうかを、予約時や問診の際に伝えておくとよいでしょう。
こうした情報が伝わることで、内視鏡の進め方を工夫したり、鎮静薬・鎮痛薬の使用方針を見直したりと、次回の検査の進め方を調整してもらいやすくなります。
「前回痛かったから、また同じ思いをするのではないか」という不安を抱えたまま検査を先延ばしにするよりも、そのときの状況を具体的に伝えることが、次回の負担を軽くするための現実的な一歩になります。
検査中に痛みを感じたら
検査中に痛みを感じた場合は、我慢せずにその場で伝えて構いません。
多くの場合、体位を変える、内視鏡の進め方を調整するといった対応によって、負担を軽くできることがあります。
「検査を止めてはいけない」「我慢しなければならない」と思い込む必要はありません。
痛みを伝えることは、検査を安全に進めるために必要な情報のひとつです。
事前に、痛みを感じたら遠慮なく伝えてよいことを確認しておくと、検査当日も声を上げやすくなるでしょう。
それでも、この検査が勧められる理由
痛みへの不安から検査を避けたくなる気持ちは自然なものですが、大腸内視鏡検査には、避けることによって見過ごされてしまうリスクもあります。
国立がん研究センター がん情報サービスによれば、便潜血検査で「要精密検査」の結果が出た場合、精密検査としては通常、大腸内視鏡検査が行われるとされています。
これは、便潜血検査だけでは大腸の内部の状態を直接確認できないためで、内視鏡検査によって腸の粘膜を直接観察することで、ポリープや病変の有無を確認できるという特性によるものです。
痛みへの対処法があることをふまえたうえで、検査を受けるかどうか、いつ受けるかについては、医師に相談しながら判断することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 帝王切開を受けたことがあります。痛みを感じやすいですか?
帝王切開の既往がある方は、手術部位の周囲で腸と周囲の組織が癒着し、腸の動きが制限されることで痛みを感じやすいとされています。
ただし個人差があり、必ず痛みを感じるとは限りません。
手術の時期や回数を予約時・問診時に伝えておくと、検査の進め方を調整してもらいやすくなります。
Q. やせ型だと必ず痛いのでしょうか?
やせ型の方は腹腔内の脂肪が少なく、腸が動きやすい一方で内視鏡の圧力が伝わりやすいため、痛みを感じやすいとされることがあります。
ただし体格だけで痛みが決まるわけではなく、必ず痛いとは限りません。
感じ方には個人差がある点をご理解ください。
Q. 前回とても痛かったのですが、次も同じでしょうか?
前回の経験がそのまま次回に当てはまるとは限りません。
前回どのあたりで痛かったか、どのくらい続いたか、鎮静薬を使ったか、途中で中止になったかといった状況を予約時に伝えることで、内視鏡の進め方や鎮静の方針を調整してもらいやすくなります。
我慢して黙っている必要はありません。
Q. 鎮静薬を使えば痛みは感じませんか?
鎮静薬・鎮痛薬の使用により、緊張や痛みが和らぐことは期待できますが、痛みを完全になくせると保証されるものではありません。
効果の感じ方にも個人差があります。
使用後は一定時間の休息が必要となり、当日は終日、自動車・バイク・自転車などの運転が固く禁止される点にも注意が必要です。
Q. 検査中に痛いと言ってもよいのでしょうか?
もちろん構いません。
我慢せずその場で伝えてください。
体位を変える、内視鏡の進め方を見直すなど、負担を軽くするための対応が行われる場合があります。
「言ってはいけない」と思い込まず、遠慮せず伝えることが大切です。
まとめ
大腸内視鏡検査の痛みは、内視鏡が腸の中を進む際に腸が引っ張られることで生じることが多いとされています。
腹部手術の既往、腹腔内の脂肪の量、腸の形や長さなどが、痛みの感じやすさに関わる要因として知られていますが、当てはまるからといって必ず痛いわけではなく、感じ方には個人差があります。
もっとも実行しやすい対処は、手術歴や過去の検査での経験を、予約時や問診の際に具体的に伝えておくことです。
つらかった経験があるときも、我慢して黙っておく必要はありません。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん検診について
国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん(結腸がん・直腸がん)
免責事項
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診療行為・治療判断に代わるものではありません。
痛みの感じ方や検査の進め方には個人差があり、検査の適応や鎮静薬・鎮痛薬の使用については、必ず医師の診察のもとで個別に判断してください。
監修者情報
板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニック 院長
佐藤公紀(さとう こうき)医師
資格・所属学会
- 医学博士(画像診断治療学)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医
- 総合内科専門医
- 難病指定医
略歴
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、社会福祉法人三井記念病院で初期研修・消化器内科医員、順天堂大学医学部附属順天堂医院で消化器内科医員を務める。
- 順天堂大学大学院医学研究科で医学博士(画像診断治療学)を取得し、三井記念病院消化器内科医長を経て板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニックを開院。
- これまでに1万例以上の内視鏡検査・治療を術者として経験している。