2026年10月06日

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が必要かどうかは、受診される方の症状や過去の検診結果によって異なるため、一律に決まるものではありません。
国立がん研究センターのがん情報サービスでは、がん検診には早期発見という利益と、心身の負担やまれに起こりうる偶発症といった不利益の両面があるという考え方が示されています[1]。
大腸内視鏡検査についても、この両方を踏まえたうえで必要性を考えることが重要です。
具体的には、便潜血検査で「要精密検査」と判定された場合、血便や排便習慣の変化などの症状がある場合、過去にポリープを指摘されて経過観察の時期が来ている場合は、必要性が高いと判断されやすい場面です。
一方で、症状がなく検診でも異常が指摘されていない場合など、いま受ける必要性が低いと判断されることもあります。
ただし、こうした整理はあくまで一般的な傾向です。
最終的な必要性の判断は、診察のうえ医師が個別に行います。
この記事でわかること
- 検査の利益と不利益という、判断の土台になる考え方
- 必要性が高いと判断されやすい場面と、そうでない場面
- 前処置の負担やまれに起こりうる偶発症といったデメリットと、迷ったときの相談のしかた
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々のケースで検査が必要かどうかを判断するものではありません。
必要性は症状や経過、検診の結果をもとに医師が個別に判断します。
判断に迷う場合は医療機関へご相談ください。
判断の土台:検査には利益と不利益の両面がある
大腸内視鏡検査の必要性を考えるうえでの土台になるのは、「検査には利益と不利益の両面がある」という考え方です。
国立がん研究センターのがん情報サービスによれば、がん検診には早期発見によって治療の選択肢が広がるという利益がある一方、検査そのものに伴う負担や、まれに起こる合併症といった不利益も併せ持つとされています[1]。
大腸内視鏡検査であれば、その場でポリープを見つけて切除できるという利益がある反面、前処置の負担や偶発症のリスクという不利益も存在します。
国立がん研究センターのがん統計によると、大腸がんは日本国内において全がんの中で最も罹患数(かかる人の数)が多く、死亡数においても上位を占めるがんとなっています[5]。
また、早期の大腸がんは自覚症状がほとんどないとされており、症状の有無だけでは必要性を判断しきれない場合があります。

だからこそ、検診の結果や症状の有無を踏まえて、利益と不利益を比べながら考えることが、「必要かどうか」を考える出発点になります。
厚生労働省が示すがん検診の考え方でも、検診は利益が不利益を上回ると考えられる方法・対象者に限定して実施することが基本とされています[4]。
必要性が高いと判断されやすい場面
便潜血検査で「要精密検査」となった場合や、血便・排便習慣の変化などの症状がある場合は、必要性が高いと判断されやすい場面です。
これらは、大腸内視鏡検査でなければ確認できない病変のサインである可能性があるためです。
他にも、意図しない体重減少や健診での貧血の指摘、過去にポリープを指摘されて経過観察の時期が来ている場合なども、必要性が高いと判断されやすい場面に含まれます。

これらの項目に当てはまるからといって、「必ず異常がある」というわけではありません。
あくまで、必要性が高いと判断されやすい場面として示したものです。
該当する項目がある場合は、まず医師に相談し、必要性について診察のうえ判断してもらうことが基本になります。
便潜血検査で「要精密検査」となった場合
便潜血検査で「要精密検査」と判定された場合、精密検査としては通常、大腸内視鏡検査が行われます。
国立がん研究センターのがん情報サービスによれば、大腸がん検診の一次検査である便潜血検査で陽性となった場合、精密検査として大腸内視鏡検査を行うことが案内されています[2]。
これは、便潜血検査だけでは出血の原因を確定できず、実際に大腸の中を直接観察しなければ正しい診断がつかないからです。
したがって、「要精密検査」という判定が出た場合には、大腸内視鏡検査を受けることが基本的な対応となります。
「自分は痔があるから出血したのだろう」と考えて精密検査を見送ろうとする方は少なくありません。
しかし、痔があるからといって出血の原因が痔だけとは限らず、痔と大腸がんやポリープが同時に存在している可能性もあります。
痔の自己診断だけで大腸の病気を否定することはできません。
また、「要精密検査」という結果は、「異常が見つかった」という意味ではなく、「大腸の中を実際に確認して、原因を確かめる必要がある」という意味です。
この違いを理解しておくと、結果を受け取ったときに必要以上に不安になったり、逆に軽く考えすぎたりすることを避けやすくなります。
大腸がんは早期の段階では自覚症状がほとんどないため、自覚症状の有無にかかわらず、便潜血検査で要精密検査の判定が出た場合は自己判断で放置せず、必ず精密検査を受けることが大切です。
必要性が低いと判断されうる場面
症状がなく、検診でも異常が指摘されていない場合は、いま大腸内視鏡検査を受ける必要性が低いと判断されることもあります。
がん検診は、症状のない方を対象に、リスクに応じた間隔で行うことが基本とされており、症状も検診結果の異常もない場合は、次の検診の機会まで様子を見るという考え方も成り立つためです。
たとえば、次のような場面が当てはまります。
- 症状がなく、検診でも異常が指摘されていない
- 直近で大腸内視鏡検査を受けて異常がなく、医師から次回の目安時期を伝えられている
- 検診の対象年齢に達しておらず、症状も家族歴もない
ただし、これらはあくまで一般的な傾向です。
大腸がんの家族歴がある場合や、年齢とともに罹患リスクが高まる傾向を踏まえると、「無症状であれば一律に検査不要」と自己判断するのは危険です。
「症状はないけれど一度受けるべきか迷っている」という場合も、まずは受けるべきかどうかそのものを事前に医師へ相談してみることをおすすめします。
検査に伴うデメリットも知っておく
大腸内視鏡検査には、前処置の負担や時間的・費用的な負担に加えて、まれに偶発症が起こる可能性もあります。
これらは検査を検討するうえで、利益とあわせて把握しておくべき情報です。
具体的には、前処置としての食事制限と下剤の服用、検査当日の時間的な拘束、保険診療であっても発生する費用負担のほか、まれに出血や、大腸に穴があく穿孔などの偶発症が起こることがあります。
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会など専門の学会も、こうした偶発症への対応をガイドラインの中で位置づけており[6]、医療機関はその発生を防ぎ、万一起きた場合に適切に対応する体制を整えることが求められています。
頻度自体はまれとされていますが、可能性がゼロというわけではない点は正直に理解しておく必要があります。
前処置の負担
検査を避けたい理由として特に多いのが、前処置の負担です。
大腸内視鏡検査では、検査前日から消化のよい食事に切り替え、当日は腸の中をきれいにするための腸管洗浄液を、指定された時間内に飲む必要があります。
下剤の味や服用量に対して不安や苦手意識を持つ方は多く、受診者にとって負担を感じやすい工程であることは事実です。
ただし、下剤の種類や飲み方の工夫により負担を和らげられる場合もあるため、不安な点は事前の問診時に医師やスタッフへご相談ください。
「便潜血が陰性なら受けなくてよい」のか
便潜血検査の結果が陰性であっても、「絶対に大腸内視鏡検査が不要」とは言い切れません。
便潜血検査は大腸がん検診の一次検査として位置づけられていますが、出血を伴わない段階の病変では、陰性であっても病変が見逃されている可能性があるという限界も指摘されています。
そのため、血便や便が細くなる、下痢と便秘を繰り返すといった自覚症状がある場合は、たとえ便潜血検査が陰性であっても自己判断で放置せず、詳しい原因を調べるために医療機関を受診することが推奨されます。
つまり、「陰性だから絶対に不要」でも「陰性でも必ず全員が受けるべき」でもなく、症状の有無や既往歴を含めて総合的に判断することが大切です。
迷っている場合の相談のしかた
検査を受けるべきか迷っている場合は、「検査を受けるべきかどうかを医師に相談したい」という目的で医療機関を受診して構いません。
多くの方は、受診イコール検査を受けることが決まっている、と考えがちですが、実際にはそうではありません。
診察の結果、症状や経過を踏まえて必要性が低いと判断されることもありますし、検査を予約したあとに、あらためて説明を聞いてから受けるかどうかを決めることもできます。
検査の負担や恐怖心が理由で迷っている場合には、鎮静剤(静脈麻酔)を使用して眠っているような状態で検査を受ける選択肢もあります。
なお、鎮静剤を使用する場合は当日の車や自転車などの運転が制限されるため、事前に検査の進め方や注意点について医師・スタッフへご相談ください。
感じ方や不安には個人差があるため、気になる点は事前に確認しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q. 便潜血が陽性でしたが、痔があります。精密検査は必要ですか?
痔があるからといって、出血の原因が痔だけであるとは限りません。
痔と大腸の病変(ポリープやがん)が同時に存在している可能性もあります。
「要精密検査」は病気が確定したという意味ではなく、出血の原因を確かめる必要があるという意味です。
自己判断で放置せず、検査結果を持って速やかに医療機関を受診してください。
Q. 症状が何もありません。それでも受けたほうがよいですか?
症状がなく、検診でも異常が指摘されていない場合は、いま受ける必要性が低いと判断されることもあります。
ただし年齢や家族歴によって考え方が変わるため、受けるべきかどうかを含めて、一度医師に相談してみることをおすすめします。
無理に自己判断する必要はありません。
Q. 検査を受けないという選択をしてもよいのでしょうか?
最終的にどうするかを決めるのはご本人ですが、便潜血陽性など必要性が高いと判断されやすい場面で受診を見送ると、発見や対応が遅れる可能性もあります。
判断に迷う場合は、受ける・受けないを決める前に、まず医師に相談し、必要性について説明を受けることをおすすめします。
Q. 前回異常なしでした。次はいつ受ければよいですか?
次回の目安時期は、前回の検査結果や年齢、症状の有無、家族歴などによって異なります。
一律の基準はないため、前回検査を受けた医療機関で示された目安の時期を確認し、時期が近づいたら、あらためて受診の要否を相談するとよいでしょう。
Q. 負担が大きくて迷っています。何か方法はありますか?
前処置や検査そのものの負担が理由で迷っている場合は、鎮静剤(静脈麻酔)を使用して苦痛を最小限に抑えた状態で検査を受けられる選択肢があります。
ただし、鎮静剤を使用する場合は検査当日の終日、自動車・バイク・自転車などの運転が禁止されます。
具体的な進め方や不安な点については、事前の診察時に医師へご相談いただくことをおすすめします。
まとめ
大腸内視鏡検査が必要かどうかは、受診される方の状態によって一律に決まるものではありません。
がん検診における「利益と不利益」の考え方をベースに、便潜血陽性や自覚症状がある場合は必要性が高く、無症状で検診異常もない場合は「今は受けずに経過観察する」という選択肢も成り立ちます。
最終的な必要性は診察の上で医師が個別に判断しますので、迷っている方は「受けるべきかどうかを相談する」という目的で、まずは医療機関を受診してみることをおすすめします。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん検診について
国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん(結腸がん・直腸がん)
監修者情報
板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニック 院長
佐藤公紀(さとう こうき)医師
資格・所属学会
- 医学博士(画像診断治療学)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医
- 総合内科専門医
- 難病指定医
略歴
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、社会福祉法人三井記念病院で初期研修・消化器内科医員、順天堂大学医学部附属順天堂医院で消化器内科医員を務める。
- 順天堂大学大学院医学研究科で医学博士(画像診断治療学)を取得し、三井記念病院消化器内科医長を経て板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニックを開院。
- これまでに1万例以上の内視鏡検査・治療を術者として経験している。