2026年10月16日

おしりの出血や違和感を、消化器内科に相談すること自体は可能です。
ただし、痔そのものの診断と治療を専門的に行っているのは肛門科・肛門外科です。
消化器内科は、大腸内視鏡検査などを通して、その出血が本当に痔によるものなのかを確認する役割を担います。
おしりからの出血で最も多い原因は痔だとされていますが、痔があること自体は、他の原因がないことの証明にはなりません。
この記事では、消化器内科と肛門科それぞれの役割の違い、出血の原因として考えられること、大腸内視鏡検査を検討する目安、そして受診をためらう気持ちとの向き合い方までを順に整理します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状の診断・治療方針を示すものではありません。
実際の症状の原因や必要な検査については、医療機関を受診し、医師の診察のうえで判断してください。
消化器内科と肛門科、それぞれの役割
結論として、痔の診断と治療を専門的に行うのは肛門科・肛門外科であり、消化器内科の役割は出血の原因が痔以外にないかを確認することにあります。
両者は競合する関係ではなく、役割が異なるだけです。
そのため、「消化器内科でもいいのか」という疑問に対しては、「相談すること自体は可能だが、受診の目的が異なる」というのが正確な答えとなります。
具体的には、肛門科・肛門外科が肛門の診察や痔の治療を一貫して行うのに対し、消化器内科は問診や大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を通じて、出血の原因が痔以外の病気ではないかを調べることを主な役割としています。
おしりからの出血という同じきっかけであっても、見ている視点が異なると考えると分かりやすいでしょう。

痔の診断と治療は肛門科・肛門外科が専門
痔の種類の見極めや治療そのものは、肛門科・肛門外科の専門領域です。
痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)といった種類の判別には、肛門を直接診察することが必要になり、症状や進行度に応じて薬物療法、生活指導、処置や手術などの選択肢が検討されます。
消化器内科では、こうした肛門そのものの詳しい診察や、痔に対する専門的な治療までは行っていないのが一般的です。
そのため、すでに肛門科・肛門外科で痔と診断されている場合や、痛み・しこりといった症状そのものの治療を受けたい場合は、肛門科・肛門外科への相談が適しています。
「消化器内科でも痔を治療してもらえる」と考えて受診すると、結局は肛門科・肛門外科を再受診することになりかねません。
二度手間を防ぐためにも、この役割の違いをあらかじめ理解しておくことが大切です。
消化器内科が担うのは「原因の確認」
消化器内科の役割は、痔の治療そのものではなく、出血や症状の原因が痔以外にないかを確認することにあります。
消化器内科では問診で出血の時期や量、排便の状況などを確認したうえで、必要と判断されれば大腸内視鏡検査を行い、大腸の粘膜を直接観察して、大腸ポリープや炎症、腫瘍性の変化など、痔以外の原因がないかを調べます。
この役割は、「肛門科の代わりに痔を診てもらう」ためのものではなく、「出血の原因を切り分ける」ためのものだと理解しておくと、受診先を選ぶ際の判断がしやすくなります。
実際には、出血の原因を詳しく調べたい場合や、健康診断の便潜血検査で陽性判定が出た場合に、消化器内科への相談が適切な選択肢となります。
診察の結果、痔による出血である可能性が高いと判断された場合は、そこから肛門科・肛門外科への受診につながることもあります。
おしりからの出血、原因は痔だけとは限らない
おしりからの出血で最も多い原因は痔だとされていますが、痔があること自体は、他の原因がないことの証明にはなりません。
大腸ポリープや大腸がん、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患でも、血便や下血がみられることがあるためです。
「出血=痔」と決めつけてしまうと、こうした他の原因の発見が遅れる可能性があります。
国立がん研究センターのがん情報サービスでは、大腸がんは早期のうちは自覚症状が乏しいことが多く、進行するにつれて血便・下血や便通の変化などの症状が現れることがあると説明されています。
つまり、出血があるからといって必ずしも重い病気とは限らない一方で、出血がないからといって大腸に異常がないとも言い切れません。
だからこそ、出血の原因を一度確認しておくことに意味があります。
これは、むやみに不安を煽るための説明ではありません。
実際には出血の多くは痔によるものであり、あくまで「可能性の一つとして確認しておく価値がある」というとらえ方が実情に近いといえます。
同時に、「痔なら心配ない」と決めつけて様子を見続けることも推奨できません。
出血の性状や経過に応じて、一度医療機関で確認しておくことが望ましい場合があります。
以前に痔と診断されたことがある方の中には、「以前も痔と言われたから、今回の出血も痔だろう」と考えて受診を見送るケースも見られます。
しかし、過去に痔と診断された経験は、今回の出血の原因が痔であることを保証するものではありません。
以前とは出血の量や色、持続期間、痛みの有無などが異なる場合は、以前と同じ痔による出血とは限らないため、改めて医療機関で原因を確認する重要な目安となります。
大腸内視鏡検査を検討したほうがよい目安
大腸内視鏡検査を必ず受けるべきかどうかは、症状や検査結果を踏まえて医師が個別に判断するものであり、一律の基準はありません。
ただし、健康診断での便潜血陽性、出血を繰り返す、排便習慣が変わった、体重減少がある、貧血を指摘されたといった要素がある場合は、検査を検討する一つの目安になります。

上記の目安のうち、特に注意が必要なのが健康診断での「便潜血陽性」です。
痔を自覚していると「痔のせいで陽性になったのだろう」と自己判断して放置してしまいがちですが、これによって大腸の病気の発見が遅れるリスクが生じます。
そのほかの目安としては、市販薬を使っても出血や症状が改善しない、あるいは一度落ち着いてもまた繰り返すという経過も挙げられます。
加えて、便が細くなる、下痢と便秘を交互に繰り返すといった排便習慣の変化、原因のはっきりしない体重減少、健診での貧血の指摘、大腸がんにかかった血縁者がいるといった要素も、あわせて考慮される目安です。
これらのうち一つでも当てはまるからといって必ず重い病気があるわけではありませんが、思い当たる点がある場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、一度医療機関に相談することが望ましいといえます。
健康診断で便潜血が陽性だった場合
健康診断で便潜血検査が陽性となった場合は、「痔があるから」と自己判断せず、精密検査を受けることが基本的な流れです。
国立がん研究センターのがん情報サービスでも示されている通り、便潜血検査で「要精密検査」となった場合、その精密検査としては大腸内視鏡検査を行うのが一般的です。
便潜血検査は簡便に受けられる一次検査である一方、陽性となった原因を特定するものではありません。
陽性の背景に痔がある場合もあれば、大腸ポリープや炎症、まれに大腸がんなどが隠れている場合もあります。
そのため、便潜血陽性の結果を受け取った際は、痔の有無にかかわらず、案内に沿って精密検査を受けることが推奨されています。
受診をためらう気持ちについて
おしりの症状での受診に抵抗を感じるのは、決して珍しいことではありません。
羞恥心から受診を先延ばしにしてしまう方は少なくなく、それ自体は自然な感情だといえます。
大切なのは、その気持ちを無理に抑え込むことではなく、受診の進め方について事前に相談できるという事実を知っておくことです。
受診はまず問診から始まります。
いつから、どのような出血や症状があるか、排便の状況はどうかといった内容を、医師が言葉で確認するところからスタートするため、いきなり診察台に上がるわけではありません。
不安なことや診察上のご希望がある場合は、受付や問診票の段階で伝えておくと、プライバシーへの配慮や説明の進め方についてスムーズな対応を受けやすくなります。
また、医療機関によっては女性医師が在籍していたり、個室での対応やプライバシーへの配慮が異なったりすることがあります。
体制は医療機関ごとに異なるため、受診前に電話やウェブサイトで確認しておくという方法もあります。
受診をためらう気持ちを抱えたまま様子を見続けるよりも、進め方を事前に相談したうえで一歩踏み出すほうが、結果として安心につながりやすいといえるでしょう。
受診したときの流れ
受診の流れをあらかじめ知っておくと、見通しが立ちやすくなり、不安の軽減につながります。
受診の基本的な流れは、「問診」から始まり、「診察」、そして必要に応じた「大腸内視鏡検査の検討」へとステップを踏んで進みます。

まず問診では、出血に気づいた時期、出血の量や色、痛みの有無、排便の状況などを確認します。
次に、必要に応じて診察が行われ、その内容を踏まえて大腸内視鏡検査が必要かどうかが検討されます。
検査を行うかどうかや、その日程については、症状や問診の内容を踏まえて医師が個別に判断するため、必ずしも初回の受診ですぐに検査となるわけではありません。
検査や診察の結果、出血の原因が痔である可能性が高いと判断された場合は、痔そのものの治療のために肛門科・肛門外科への受診が案内されることがあります。
一方で、大腸ポリープや炎症など痔以外の原因が見つかった場合は、その原因に応じた治療や経過観察へとつながります。
いずれの場合も、まずは相談してみることが、次の適切な対応につながる第一歩になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 消化器内科で痔の薬を出してもらえますか?
可能です。
ただし、消化器内科は、痔そのものの診断や治療を専門的に行う診療科ではありません。
すでに「痔」と診断されており、処置や手術などの専門的な治療を希望される場合は、肛門科・肛門外科を受診するのが基本となります。
出血の原因をまず確認したいという段階であれば、消化器内科への相談も選択肢の一つになります。
Q. 出血が止まっていても受診したほうがよいですか?
市販薬などで一時的に出血が落ち着いた場合でも、根本的な原因が解消されたとは限りません。
精密検査や追加治療が必要かどうかは診察の上で医師が判断しますので、原因が不確定な場合は受診をおすすめします。
Q. 以前に痔と診断されています。それでも検査は必要ですか?
以前の診断は、今回の出血の原因が同じく痔であることを保証するものではありません。
出血の量や色、持続期間、痛みの有無などが以前と異なる場合は、別の疾患が隠れている可能性もあるため、改めて医療機関で原因を確認することが推奨されます。
気になる変化があれば、自己判断せず相談することが望ましいでしょう。
Q. 必ず大腸内視鏡検査を受けることになりますか?
検査を行うかどうかは、問診や診察の内容を踏まえて医師が個別に判断するものであり、相談したからといって必ず検査を受けることになるわけではありません。
症状や経過に応じて、まずは問診・診察から進められ、検査の要否はそのうえで案内されます。
Q. 女性医師に相談することはできますか?
女性医師の在籍状況や個室対応などの体制は、医療機関によって異なります。
女性医師への相談を希望する場合は、受診前に電話やウェブサイトで対応状況を確認しておくと、当日の不安を減らしやすくなります。
事前の問い合わせ自体は、多くの医療機関で受け付けています。
まとめ
おしりの出血を消化器内科に相談すること自体は可能です。
ただし、痔そのものの診断と治療を専門としているのは肛門科・肛門外科であり、消化器内科の役割は、出血の原因が痔以外にないかを大腸内視鏡検査などで確認することにあります。
おしりからの出血で最も多い原因は痔ですが、痔があること自体は他の原因がないことの証明にはなりません。
健康診断での便潜血陽性や排便習慣の変化が見られる場合は、放置せず医療機関で原因を確かめることが推奨されます。
受診に抵抗を感じる場合でも、問診の進め方や検査体制については事前に配慮・相談が可能です。
お尻の出血でお悩みの際は、まずは一度医療機関へ相談してみることから始めてみてください。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。
症状の原因や検査・治療の必要性は、医療機関を受診し、医師の診察のうえで判断してください。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん(結腸がん・直腸がん)
国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん検診について
監修者情報
板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニック 院長
佐藤公紀(さとう こうき)医師
資格・所属学会
- 医学博士(画像診断治療学)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医
- 総合内科専門医
- 難病指定医
略歴
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、社会福祉法人三井記念病院で初期研修・消化器内科医員、順天堂大学医学部附属順天堂医院で消化器内科医員を務める。
- 順天堂大学大学院医学研究科で医学博士(画像診断治療学)を取得し、三井記念病院消化器内科医長を経て板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニックを開院。
- これまでに1万例以上の内視鏡検査・治療を術者として経験している。