2026年10月07日

経鼻内視鏡は、鼻から細い内視鏡を入れて食道・胃・十二指腸を観察する、胃カメラの方法の1つです。
観察する範囲は、口から内視鏡を入れる場合と同じです。
内視鏡が舌の根元に触れにくいため、えずくような反射(嘔吐反射)が起こりにくいとされ、検査中に医師と会話できるという特徴があります。
一方で、鼻の粘膜を通るため鼻の痛みや出血が起こることがあり、鼻腔の状態によっては経鼻が難しい場合もあります。
感じ方には個人差があります。
この記事でわかること
- 経鼻内視鏡とはどういう検査で、口から入れる方法と何が違うのか
- メリットと、知っておきたいデメリット・適さない場合
- 「鼻から」と「鎮静薬を使う」という2つの選択肢の考え方と、予約時の確認事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。
経鼻内視鏡が適しているかどうかは、鼻腔の状態などを踏まえて診察のうえ医師が判断します。
対応している方法は医療機関により異なるため、受診先にご確認ください。
3つの選択肢を一目で比較
胃カメラを受ける際に選択肢となるのは、大きく分けて「経鼻(鼻から)」「経口・鎮静なし(口から)」「経口・鎮静あり(口から)」の3つです。
それぞれ挿入経路や検査中の様子、検査後の制約が異なるため、自分にとってどれが現実的かを事前に把握しておくことが判断の助けになります。
経鼻は鼻から内視鏡を入れる方法で、えずく反射が起こりにくいとされ、検査中も会話ができます。
一方、鼻の粘膜を通るため痛みや出血が起こることがあり、鼻腔の状態によっては選べない場合があります。
経口・鎮静なしは口から入れる従来の方法で、えずく反射を感じやすい場合がありますが、検査後の制約は少なく、当日の運転が可能とされることが多いのが特徴です。
経口・鎮静ありは口から入れる際に鎮静薬を使う方法で、うとうとした状態で受けられ、不安や緊張が和らぐことが期待できる一方、検査後は一定時間の休息が必要で、当日の運転はできません。
このように、どの方法にもメリットと留意点の両方があります。
次の項目からは、それぞれの内容を具体的に見ていきます。

経鼻内視鏡とはどういう検査か
経鼻内視鏡は、鼻から細径の内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸を観察する上部消化管内視鏡検査の方法の1つです。
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会によれば、上部消化管内視鏡検査は食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察し、必要に応じて組織を採取して調べることができる検査とされています。
挿入する経路が口か鼻かという違いはあっても、検査そのものの目的は共通しています。
経鼻内視鏡では、あらかじめ鼻の中に局所麻酔の処置を行ったうえで、直径数ミリ程度の細い内視鏡を鼻の穴から挿入します。
内視鏡は鼻腔から喉の奥を通り、食道・胃・十二指腸へと進んでいきます。
検査中はモニターの画像を通じて粘膜の状態を確認し、気になる部分があれば組織を採取して詳しく調べる場合もあります。
観察する範囲は口から入れる場合と同じ
「鼻から入れると見える範囲が狭くなるのでは」と気になる方もいますが、経鼻内視鏡で観察する範囲は、経口内視鏡と同じく食道・胃・十二指腸です。
挿入する経路が変わっても、内視鏡の先端が到達する場所やカメラで確認できる範囲そのものは変わりません。
そのため、胃の痛みや胸やけといった症状の原因を調べたり、胃がん検診の精密検査として粘膜の状態を確認したりする目的では、経鼻・経口のどちらを選んでも、検査で得られる情報の範囲に差はありません。
国立がん研究センターのがん情報サービスにおいても、上部消化管内視鏡検査は胃がんの診断のために食道から十二指腸までの粘膜を観察し、必要に応じて組織を採取する検査として案内されています。
組織の採取(生検)が必要かどうかは、検査中に医師が粘膜の状態を確認しながら判断します。
経鼻内視鏡のメリット
経鼻内視鏡の最大の特徴は、内視鏡が舌の根元に触れにくいため、えずくような反射(嘔吐反射)が起こりにくいとされる点です。
加えて、口がふさがれないため検査中に医師と会話ができるという実際上のメリットもあります。
ただし、これらはあくまで「起こりにくいとされる」「できる」という一般的な傾向であり、感じ方には個人差があります。
以下では、それぞれの内容を具体的に説明します。
えずく反射が起こりにくいとされる
嘔吐反射とは、喉の奥や舌の根元が刺激されたときに、体が反射的に「えずく」動きです。
経口内視鏡では、内視鏡が舌の根元付近を通るため、この反射が起こりやすいとされています。
経鼻内視鏡は鼻から挿入するため内視鏡が舌の根元に触れにくく、この反射が起こりにくいとされているのが最大の特徴です。
ただし、「まったくえずきません」というわけではありません。
鼻から挿入した内視鏡も、最終的には喉を通過して食道へと進むため、その通過の際に反射を感じる方もいます。
感じ方には個人差があり、経鼻であれば誰でも快適に受けられるとは限らない点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
検査中に医師と会話できる
経鼻内視鏡のもう1つの実際的な特徴は、口がふさがれないため検査中に会話ができることです。
経口内視鏡では口にマウスピースを装着するため会話は難しくなりますが、経鼻であれば口は自由に動かせます。
そのため、検査中に体調の変化を医師に伝えたり、痛みや違和感がある場合にその場で質問したりすることができます。
検査を受けている間の不安を言葉で伝えられる点は、初めて内視鏡検査を受ける方にとって安心材料の1つになり得ます。
知っておきたいデメリット
経鼻内視鏡には、鼻から挿入することに伴う独自のデメリットもあります。
鼻の粘膜を通るため鼻の痛みや出血が起こることがあり、鼻づまりがある場合は挿入しにくいことがあります。
また、処置の内容によっては経口の方法が選ばれる場合もあります。
鼻の粘膜は毛細血管が多く、デリケートな組織です。
細い内視鏡であっても、粘膜に触れながら挿入するため、痛みを感じたり、まれに鼻血が出たりすることがあります。
多くの場合は検査後しばらくすると落ち着きますが、出血しやすい薬を服用している方などは、事前に医師へ伝えておくことが大切です。
鼻づまりや鼻の粘膜の腫れがある場合、内視鏡がスムーズに通らず、挿入時に強い抵抗や痛みを感じることがあります。
花粉症の時期など、鼻の状態が普段と異なるタイミングでは、経鼻での挿入がより難しくなる場合もあります。
さらに、経鼻内視鏡で使用する内視鏡は経口用に比べて細径であるため、組織の採取や治療的な処置を伴う場合は、経口の内視鏡が選ばれることもあります。
どちらの方法が適しているかは、検査の目的や鼻腔の状態を踏まえて、診察のうえ医師が判断します。
経鼻が適さない場合がある
具体的には、生まれつき鼻腔が狭い方、鼻中隔弯曲症など鼻の内部の形状に特徴がある方、鼻の手術を受けたことがある方、鼻血が出やすい方などが該当します。
こうした状態がある場合、内視鏡を安全に通すことが難しく、無理に挿入すると強い痛みや出血につながるおそれがあるため、医師の判断で経口の方法に変更されることがあります。
「経鼻を希望していたのに、当日になって口からの検査に変わってしまった」という事態は、できるだけ避けたいものです。
こうした行き違いを防ぐためにも、ご自身の鼻の状態(鼻づまりや花粉症、手術歴、鼻血が出やすいなど)について、予約時に伝えておくとよいでしょう。
これらの情報を予約の段階で伝えておくことで、医療機関側も事前に鼻腔の状態を確認しやすくなります。
医療機関によっては、検査当日に鼻腔の状態を診察したうえで、経鼻が可能かどうかをあらためて判断する場合もあります。
いずれにしても、経鼻が適しているかどうかの最終的な判断は、診察のうえ医師が行うものであることを理解しておいてください。
「鼻から」と「鎮静薬を使う」はどう違うのか
「鼻から入れる」ことと「鎮静薬を使う」ことは、目的も検査後の制約も異なる別の選択肢です。
この2つを混同すると、想定と違う検査当日の流れになってしまうことがあるため、それぞれの違いを整理しておく必要があります。
経鼻で鎮静薬を使わない場合、検査中は基本的に意識がはっきりした状態のままです。
会話ができ、検査後もすぐに日常生活に戻れることが多く、当日の運転が可能とされる場合もあります。
一方、鎮静薬を使う場合は、経路が鼻であっても口であっても、うとうとした状態で検査を受けられるため、不安や緊張が和らぐことが期待できます。
ただし、鎮静薬を使った場合は検査後に一定時間の休息が必要で、当日の運転はできません。
つまり、「えずく反射を抑えたい」という悩みには経鼻という経路の選択肢が、「検査そのものへの不安や緊張を和らげたい」という悩みには鎮静薬という選択肢が、それぞれ対応しています。
鎮静薬の効果や検査後の過ごし方については、別記事「胃カメラの鎮静剤とは?メリットと知っておきたいリスク・検査後の注意点」でも詳しく取り上げていますので、あわせてご確認ください。
経鼻でも鎮静薬を使えるのか
経鼻内視鏡と鎮静薬は、組み合わせて用いることも可能です。
ただし、鎮静薬の使用に対応しているかどうかや、経鼻と鎮静薬を組み合わせられるかどうかは、医療機関により異なります。
鎮静薬の使用を希望する場合は、経鼻・経口のいずれを選ぶ場合であっても、予約の際にその旨を伝えて確認しておくことをおすすめします。
使用できる薬剤の種類や検査後の付き添い・送迎の要否についても、あわせて確認しておくと当日の流れがイメージしやすくなります。
感じ方には個人差があります
ここまで経鼻内視鏡のメリット・デメリットを説明してきましたが、最も大切なのは、感じ方には個人差があるという前提です。
「鼻からなら誰でも楽に受けられる」という理解は、実際とは異なる場合があります。
経鼻内視鏡であっても、鼻を通過する際の違和感や、喉の奥を通過する際にわずかな反射を感じる方はいます。
逆に、経口内視鏡であっても、大きな苦痛を感じることなく検査を終えられる方も少なくありません。
過去に経口内視鏡でつらい経験をした方が、経鼻であれば必ず快適に受けられるとは限らない一方で、鎮静薬などほかの選択肢を組み合わせることで負担を減らせる可能性もあります。
大切なのは、特定の方法を「万人にとっての正解」と決めつけず、自分の状態や希望を医師に伝えたうえで、複数の選択肢の中から自分に合った方法を選ぶことです。
過去の検査でつらい思いをした経験がある場合は、そのことも含めて診察時に伝えておくと、医師も検査方法を検討しやすくなります。
予約時に確認・相談しておくとよいこと
経鼻内視鏡を希望する場合、予約の段階でいくつかの情報を伝えておくことで、当日の行き違いを減らせます。
具体的には、経鼻内視鏡への対応状況、鼻の状態、鎮静薬の希望、当日の来院手段、費用の扱いという5つの項目です。
まず、受診を検討している医療機関が経鼻内視鏡に対応しているかどうかを確認します。
次に、鼻づまりや花粉症の症状、鼻の手術歴、鼻血が出やすいかどうかといった鼻の状態を伝えます。
あわせて、鎮静薬の使用を希望するかどうかも決めておくとよいでしょう。
鎮静薬を使う場合は検査後に運転ができなくなるため、当日の来院・帰宅の手段をどうするかもあらかじめ考えておく必要があります。
最後に、費用の扱いについても事前に確認しておくと安心です。

費用の扱いについて
経鼻内視鏡の費用がどのように扱われるかは、検査の目的や内容によって変わります。
保険診療の点数は検査内容に応じて定められており、挿入経路が鼻か口かという違いによる費用の扱いについては、受診する医療機関に確認しておくことをおすすめします。
症状があって検査を受ける場合や、健康診断で精密検査が必要とされた場合などは、保険診療として検査を受けられるのが一般的です。
一方、症状がなく任意で受ける場合は自費(自由診療)となることがあります。
いずれの場合も、経路の違いによって費用の扱いが変わるかどうかは医療機関ごとに異なるため、予約時にあわせて確認しておくと、当日の会計で戸惑うことを避けられます。
胃カメラの費用についてより詳しく知りたい方は、別記事「胃カメラの費用」もご参照ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 経鼻なら、えずくことはまったくありませんか?
経鼻内視鏡は内視鏡が舌の根元に触れにくいため、えずく反射が起こりにくいとされていますが、まったく起こらないとは言い切れません。
喉の奥を通過する際に反射を感じる方もおり、感じ方には個人差があります。
Q. 鼻血が出ることはありますか?
鼻の粘膜を通るため、検査中や検査後に鼻血が出ることがあります。
多くの場合は自然に治まりますが、出血しやすい体質の方や薬を服用中の方は、事前に医師へ伝えておいてください。
Q. 鼻づまりがありますが受けられますか?
鼻づまりの程度によっては、経鼻内視鏡の挿入が難しい場合があります。
花粉症などで鼻の状態が普段と異なる場合は、予約時にその旨を伝え、診察のうえで経鼻が可能かを判断してもらってください。
Q. 経鼻と経口で、分かることに違いはありますか?
経鼻内視鏡と経口内視鏡で観察する範囲は同じで、食道・胃・十二指腸を確認できます。
挿入する経路が異なるだけで、検査で得られる情報の範囲そのものに違いはありません。
Q. 経鼻を希望していても、当日に口からになることはありますか?
鼻腔が狭い、鼻中隔の形状に特徴がある、鼻の状態が挿入に適さないなどの理由で、当日に経口の方法へ変更されることがあります。
適否は診察のうえ医師が判断します。
まとめ
経鼻内視鏡は、鼻から細い内視鏡を入れて食道・胃・十二指腸を観察する方法で、確認できる範囲は口から入れる場合と同じです。
えずく反射が起こりにくいとされる一方、鼻の痛みや出血が起こることがあり、鼻腔の状態によっては適さない場合もあります。
「鼻から」と「鎮静薬を使う」は、それぞれ別の目的を持つ選択肢であり、どちらが適するかは診察のうえ医師と相談して決めるものです。
予約の際には、鼻の状態や鎮静薬の希望をあらかじめ伝えておくとよいでしょう。
参考文献
監修者情報
板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニック 院長
佐藤公紀(さとう こうき)医師
資格・所属学会
- 医学博士(画像診断治療学)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医
- 総合内科専門医
- 難病指定医
略歴
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、社会福祉法人三井記念病院で初期研修・消化器内科医員、順天堂大学医学部附属順天堂医院で消化器内科医員を務める。
- 順天堂大学大学院医学研究科で医学博士(画像診断治療学)を取得し、三井記念病院消化器内科医長を経て板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニックを開院。
- これまでに1万例以上の内視鏡検査・治療を術者として経験している。