2026年10月07日

内視鏡検査は、消化管の内側の粘膜を直接観察する検査です。
胃カメラでは食道・胃・十二指腸を、大腸カメラでは大腸全体を観察し、炎症や潰瘍、ポリープ、がんなどを見つけることができます。
その場で組織を少し採取して顕微鏡で調べたり、病変によっては切除できたりする点が、他の検査にはない特徴です。
一方、肝臓・胆のう・膵臓は消化管の外側にあるため内視鏡の観察対象ではなく、腹部エコーやCTなど別の検査で調べます。
この記事でわかること
- 胃カメラ・大腸カメラそれぞれで観察できる範囲と、見つかる病気
- 内視鏡では分からないこと(検査の限界)と、そのとき使われる検査
- 検査で異常が見つからないのに症状が続く場合の考え方
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、自己診断を目的としたものではありません。
どの検査が必要かは、症状や経過をもとに医師が個別に判断します。
内視鏡は「消化管の内側の粘膜」を直接見る検査
内視鏡検査は、口や肛門から細い管状のカメラを挿入し、消化管の内側の粘膜をリアルタイムに直接観察する検査です。
エックス線写真のように影として写すのではなく、粘膜の色調や凹凸、出血の有無をそのままの状態で確認できる点が最大の特徴です。
観察した映像はモニターに拡大表示されるため、肉眼では分かりにくい微細な粘膜の変化も確認しやすくなります。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は口または鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸までを観察します。
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)は肛門から挿入し、大腸全体に加えて、小腸の末端にあたる回腸の終わり(回腸末端)まで観察できることがあります。
このように、内視鏡が観察できるのはあくまで「管の内側の粘膜」です。
粘膜より奥の層や、消化管の外側にある臓器は直接の観察対象に含まれません。
この「粘膜を直接見る」という基本の仕組みを押さえておくと、次に紹介する胃カメラ・大腸カメラで分かることと、後述する分からないことの両方が、より理解しやすくなります。

内視鏡ならではの3つの特徴
内視鏡には、他の検査にはない3つの特徴があります。
1点目は、粘膜の状態を直接、色や形まで観察できることです。
炎症による赤み、潰瘍によるへこみ、ポリープの隆起といった変化を、その場でリアルタイムに確認できます。
2点目は、その場で組織を少し採取して顕微鏡で調べられることです。
これは「生検」と呼ばれる方法で、詳しくは後述します。
3点目は、病変の種類や大きさによっては、検査と同じタイミングで切除できる場合があることです。
国立がん研究センターのがん情報サービスにおける胃がん・大腸がんの検査に関する解説[1][2]によれば、内視鏡検査では観察した粘膜の一部を採取して組織を調べる生検が行われることがあり、病変の性質を確認するうえで重要な役割を果たすとされています。
このように、内視鏡は「見る」「調べる」「治療する」の3つを同じ検査の中で行える場合がある点が、画像を撮影するだけの検査とは異なる特徴です。
ただし、切除できるかどうかは病変の大きさや状態によって異なり、実際に行うかどうかは検査結果をもとに医師が判断します。
胃カメラでわかること
胃カメラで観察できるのは、食道・胃・十二指腸の粘膜です。
この範囲では、逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、ピロリ菌感染に伴う粘膜の変化、ポリープ、食道や胃のがんといった病気が見つかることがあります。
食道では、胃の内容物が逆流することで炎症を起こす逆流性食道炎がよくみられます。
胃・十二指腸では、粘膜に炎症が生じる胃炎や、粘膜がより深く傷ついた状態である胃潰瘍・十二指腸潰瘍が代表的です。
また、ピロリ菌に感染していると胃の粘膜に特徴的な変化が生じることがあり、内視鏡ではこうした変化の有無も確認できます。
ポリープは、粘膜の一部が盛り上がってできる隆起性の病変で、食道・胃のいずれにもできることがあります。
多くは良性ですが、種類によっては経過観察や切除の対象になる場合があります。
食道がんや胃がんも、胃カメラで見つかる病気に含まれます。
ただし、これらのがんは早期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いとされており、症状の有無だけでは判断できません。
だからこそ、粘膜の状態を直接確認できる内視鏡検査に一定の役割があるといえます。
これらの病気は、症状の強さと実際の粘膜の状態が必ずしも一致しないことも珍しくありません。
軽い胃もたれ程度でも粘膜に変化が見つかることもあれば、自覚症状がほとんどないまま進行しているケースもあります。
気になる症状が続く場合は、症状の程度だけで判断せず、検査による確認を検討する価値があります。

大腸カメラでわかること
大腸カメラで観察できるのは、大腸全体の粘膜です。
この範囲では、大腸ポリープ、大腸がん、潰瘍性大腸炎・クローン病といった腸の炎症、大腸憩室、出血している部位などが見つかることがあります。
大腸ポリープは、大腸の粘膜が盛り上がってできる隆起性の病変です。
多くは良性ですが、種類や大きさによっては時間の経過とともに大腸がんに進行する可能性があるものも含まれます。
自覚症状がないまま見つかることが多く、大腸カメラによる観察が発見の主な手段になります。
潰瘍性大腸炎やクローン病は、腸に慢性的な炎症が繰り返し起こる病気です。
腹痛や下痢、血便が長期間にわたって続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴とされています。
大腸憩室は、大腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出した状態で、多くは無症状ですが、炎症や出血の原因になることがあります。
国立がん研究センターのがん情報サービスにおける大腸がん検診についての解説[3]によれば、便潜血検査は大腸がん検診の一次検査として位置づけられており、便潜血検査で陽性となった場合には、精密検査として大腸カメラが行われるとされています。
便潜血陽性がそのまま大腸がんを意味するわけではありませんが、痔などの他の原因であっても、大腸カメラを受けなければ原因を確定することはできません。

生検(組織を採取して調べる検査)とは
生検とは、内視鏡検査中に粘膜の一部をごく小さく採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。
内視鏡で見た目の変化を確認できても、それが炎症によるものか、良性の病変か、がんに関連する変化かは、目視だけでは判断できないことがあります。
生検はこうした場合に、組織のレベルで性質を確認するために行われます。
採取する組織はごく小さいため、生検自体が検査全体の時間や体への負担を大きく増やすことは少ないとされています。
ただし、採取した組織を専門の施設で処理し、顕微鏡で観察して結果を報告するまでには一定の日数がかかるため、検査当日にすべての結果が分かるわけではありません。
生検の結果は、その後の経過観察の方針や、追加の検査・治療が必要かどうかを判断するための重要な材料になります。
結果が出るまでの期間は医療機関や検査内容によって異なるため、目安については検査を受けた医療機関に確認することをおすすめします。
内視鏡では分からないこと
内視鏡が観察できるのは、消化管の内側の粘膜に限られます。
そのため、消化管の外側にある臓器や、粘膜よりも奥深くの状態は、内視鏡だけでは分かりません。
具体的には、肝臓・胆のう・膵臓は消化管の外側にある臓器であるため、内視鏡の観察対象には含まれません。
これらの臓器の状態は、腹部エコーや血液検査、CTなど別の方法で調べます。
また、小腸の大部分も、通常の胃カメラ・大腸カメラでは届かない範囲があります。
「内視鏡を受ければお腹の不調の原因はすべて分かる」と考えている方は少なくありませんが、これは正確ではありません。
内視鏡はあくまで消化管の内側を見る検査であり、みぞおちの痛みや腹部の張りといった症状の原因が、肝臓・胆のう・膵臓など消化管の外側にある場合、内視鏡だけでは原因を突き止められないことがあります。
そのため、症状の内容や経過によっては、内視鏡に加えて腹部エコーや血液検査など複数の検査を組み合わせて調べることがあります。
他の検査との役割の違い
内視鏡以外にも、消化器の状態を調べる検査にはいくつかの種類があり、それぞれ調べる対象や方法が異なります。
優劣ではなく役割の違いとして理解しておくと、検査を組み合わせる意味が分かりやすくなります。
胃部エックス線検査(バリウム検査)は、バリウムを飲んで胃の形や粘膜の凹凸をエックス線で写し出す検査です。
粘膜を直接見るのではなく影として写し出す方法のため、内視鏡のように色調の変化まで確認したり、その場で組織を採取したりすることはできません。
便潜血検査は、便に混じったごく微量の血液の有無を調べる検査で、大腸がん検診の一次検査として広く用いられています。
陽性になった場合は、原因を確認するための精密検査として大腸カメラが行われます。
腹部エコーは、体の外側から超音波を当てて、肝臓・胆のう・膵臓・腎臓などの状態を調べる検査です。
内視鏡では観察できない、消化管の外側にある臓器の評価に適しています。
CTは、体の断面を撮影して広い範囲を一度に調べられる検査で、腹部エコーと同様に消化管の外側の臓器や周囲への広がりを確認する場面で用いられます。
このように、それぞれの検査には得意とする範囲があります。
どの検査を行うか、あるいは組み合わせるかは、症状や経過をもとに医師が判断します。

検査で「異常なし」と言われたのに症状が続く場合
内視鏡検査を受けて「特に異常はありません」と言われたのに、症状だけが続いているというケースは少なくありません。
これは、見落としや気のせいというわけではなく、検査で明らかな異常が見つからないタイプの病気である可能性があります。
代表的な例が、機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群です。
機能性ディスペプシアは、胃もたれやみぞおちの痛みが続くにもかかわらず、胃カメラで胃炎や潰瘍などのはっきりとした異常が確認できない状態を指します。
日本消化器病学会の「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(改訂第2版)」[5]では、この病気は検査で異常がないことを理由に否定されるものではなく、症状そのものをもとに診断される独立した病気として整理されています。
過敏性腸症候群についても同様で、大腸カメラで炎症やポリープなどの異常が見当たらないまま、下痢や便秘、腹痛といった症状が続く状態として知られています。
言い換えると、「異常なし」という検査結果は、「原因となり得る病気の多くが除外できた」ことを示すものであり、「症状に理由がない」ということではありません。
過去に検査を受けて異常がないと言われた経験がある方でも、その後も症状が変わらず続いている、あるいは変化しているのであれば、経過をあらためて伝えたうえで相談する意味があります。
自分の症状ではどの検査が適しているか
自分の症状にどの検査が関連しやすいかは、症状が現れている場所からある程度の見当をつけることができます。
ただし、これはあくまで相談のための材料であり、実際にどの検査を行うかは、診察のうえで医師が判断します。
たとえば、胸やけや飲み込みにくさが続く場合は食道・胃の領域、みぞおちの痛みや胃もたれが続く場合は胃・十二指腸の領域が関連しやすく、いずれも胃カメラでの確認が検討されます。
下痢や便秘、血便が続く場合は大腸の領域が関連しやすく、大腸カメラが検討されます。
一方、右上腹部の痛みや健診での肝機能異常など、肝臓・胆のう・膵臓に関連する症状が疑われる場合は、内視鏡ではなく腹部エコーや血液検査が中心になります。
複数の症状が同時に見られる場合や、症状の場所がはっきりしない場合には、内視鏡と他の検査を組み合わせて調べることもあります。
自己判断で検査を選ぶのではなく、症状の内容や経過を医師に伝えたうえで、どの検査が必要かを相談することが、原因の特定につながる近道といえます。
よくある質問(FAQ)
Q. 内視鏡検査を受ければ、お腹の病気はすべて分かりますか?
いいえ、すべて分かるわけではありません。
内視鏡は消化管の内側の粘膜を観察する検査であり、肝臓・胆のう・膵臓など消化管の外側にある臓器は観察対象に含まれません。
これらの状態は、腹部エコーや血液検査など別の方法で調べます。
Q. 肝臓の数値が悪いと言われました。内視鏡で分かりますか?
分かりません。
内視鏡は消化管の内側を観察する検査であり、肝臓は対象外です。
肝機能の評価には血液検査の確認や腹部エコーなどが用いられるため、数値を指摘された場合は消化器内科への相談をおすすめします。
Q. バリウム検査を受けていれば胃カメラは不要ですか?
必ずしもそうとはいえません。
バリウム検査は胃の形や凹凸を影として写す検査で、内視鏡のように粘膜の色調の変化を直接見たり、その場で組織を採取したりすることはできません。
どちらが必要かは症状や経過をもとに医師が判断します。
Q. 生検の結果はいつ分かりますか?
採取した組織を顕微鏡で調べて結果が出るまでには、一定の日数がかかるのが一般的です。
検査当日にすべての結果が分かるわけではないため、結果が出るまでの目安の期間については、検査を受けた医療機関に確認することをおすすめします。
Q. 検査で異常なしと言われましたが、症状が続いています。どうすればよいですか?
内視鏡で異常が見つからないタイプの病気もあるため、「異常なし」がそのまま「原因不明」を意味するわけではありません。
症状が続く、あるいは変化している場合は、その経過を伝えたうえで、あらためて相談することをおすすめします。
まとめ
内視鏡検査は、消化管の内側の粘膜を直接観察し、必要に応じてその場で組織を採取したり病変を切除したりできる検査です。
胃カメラでは食道・胃・十二指腸の病気を、大腸カメラでは大腸の病気を見つけることができます。
一方で、肝臓・胆のう・膵臓は観察対象ではなく、腹部エコーやCTなど別の検査で調べます。
また、検査で異常が見つからなくても症状が続く病気が、学会のガイドラインで定義されています。
どの検査が自分の症状に適しているかは、症状や経過をもとに医師が判断するため、気になる症状がある場合は、自己判断で様子を見続けず、一度相談することをおすすめします。
※この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。
症状がある方は必ず医療機関を受診してください。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん検診について
日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)
監修者情報
板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニック 院長
佐藤公紀(さとう こうき)医師
資格・所属学会
- 医学博士(画像診断治療学)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医
- 総合内科専門医
- 難病指定医
略歴
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、社会福祉法人三井記念病院で初期研修・消化器内科医員、順天堂大学医学部附属順天堂医院で消化器内科医員を務める。
- 順天堂大学大学院医学研究科で医学博士(画像診断治療学)を取得し、三井記念病院消化器内科医長を経て板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニックを開院。
- これまでに1万例以上の内視鏡検査・治療を術者として経験している。