2026年10月05日

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、胃の痛みや胃もたれなどの症状があるときや、健康診断で要精密検査となった場合は保険診療の対象になります。
3割負担であれば、粘膜を観察するだけで終わった場合は3,000円台後半〜4,000円台前半程度、組織を採取して調べる生検が加わると8,000円台後半〜1万円前後まで幅が出るのが一般的な目安です。
保険診療の点数は国が定める公定価格のため、同じ内容の検査を行えばどの医療機関でも点数自体は変わりません。
ただし、これらはあくまで一般的な保険診療にもとづく目安であり、実際の金額は診療内容や自己負担割合、初診・再診の別などによって変わります。
この記事では、①観察のみ・生検あり・追加検査ありのケース別に窓口で支払う金額の目安、②費用に幅が出る理由と検査当日に金額が変わる仕組み、③保険が使えるケースと自費になるケース、④負担が大きくなったときに使える制度、の4点を順番に解説します。
※本記事に記載する金額は、一般的な保険診療にもとづく目安です。
実際の負担額は診療内容・自己負担割合・加算の有無により異なります。
また、診療報酬は制度改定により変更されるため、最新の情報は厚生労働省の公表資料および受診先の医療機関でご確認ください。
ケース別・胃カメラの費用の目安
胃カメラの費用は、検査当日に何を行ったかによって3段階に分かれるのが一般的です。
結論から言うと、3割負担の場合、①粘膜を観察するだけで終われば3,000円台後半〜4,000円台前半程度、②組織を採取して調べる生検が加わると8,000円台後半〜1万円前後、③生検に加えてピロリ菌検査などが行われると9,000円台後半〜1万円台前半が目安になります。
この違いが生まれる理由はシンプルです。
保険診療では、検査そのものの点数に加えて、実施した処置や検査の内容ごとに点数が積み上がっていきます。
観察のみであれば内視鏡検査の点数と診察料だけで済みますが、生検を行うと組織を採取する処置の点数、採取した組織を顕微鏡で調べるための標本作製の点数、医師が診断を下すための点数がそれぞれ加算されます。
ピロリ菌検査などをさらに行えば、その検査分の点数も上乗せされます。
いずれの金額も、あくまで一般的な保険診療にもとづく目安です。
初診か再診か、処方の有無、採取した組織の数などによって実際の金額は変わりますので、幅を持って捉えてください。

観察のみで終わった場合
内視鏡で胃と十二指腸の粘膜を観察するだけで、組織の採取を行わずに検査が終了した場合、3割負担の場合の窓口負担は3,000円台後半〜4,000円台前半程度が目安です。
この金額には、内視鏡検査そのものの点数に加えて、診察料(初診料または再診料)が含まれています。
初めて受診する医療機関であれば初診料が、以前から通院している医療機関であれば再診料が加算されるため、同じ「観察のみ」でも初診か再診かで数百円単位の差が出ます。
また、検査後に薬が処方された場合は、処方料や薬剤料が別途加算される点にも留意してください。
生検(組織検査)が加わった場合
観察の途中で気になる粘膜が見つかり、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検が加わった場合、3割負担の場合の窓口負担は8,000円台後半〜1万円前後が目安になります。
これは、観察のみの場合の点数に加えて、組織を採取する処置の点数、採取した組織を標本にする処置の点数、医師が病理診断を行う点数がそれぞれ積み上がるためです。
国立がん研究センターによれば、胃の内視鏡検査では粘膜の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査が行われる場合があるとされています。
採取する組織の数が複数になると、その分だけ処置の点数が加わることがあるため、同じ「生検あり」でも金額に幅が出る点は理解しておくとよいでしょう。
ピロリ菌検査などが加わった場合
生検に加えて、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染の有無を調べる検査が行われた場合、3割負担の場合の窓口負担は9,000円台後半〜1万円台前半が目安です。
ピロリ菌検査は、内視鏡検査中に採取した組織を使う方法や、血液・便を使う方法など複数の手法があり、いずれの方法を選ぶかによって加算される点数がわずかに異なります。
ピロリ菌検査を行うかどうか、またどの検査方法を選ぶかは、症状や過去の検査結果などを踏まえて医師が個別に判断します。
除菌治療が必要かどうかについても、検査結果を踏まえた医師の診察のうえで決まるものであり、検査を受ければ必ず除菌が必要になるという意味ではありません。
なぜ検査当日まで金額が確定しないのか
胃カメラの費用が予約時点で確定しない最大の理由は、生検を行うかどうかが検査中に判断されるからです。
医師は内視鏡で粘膜の色や形、表面の状態を実際に観察しながら、組織を採取して調べる必要があるかをその場で判断します。
そのため、予約の段階で「今日はいくらになります」と正確な金額を提示することは、原則としてできません。
この仕組みを知らないまま検査を受けると、「予約時に聞いていた金額より高くなった」と感じることがあります。
しかし実際には、料金体系が変わったわけではなく、検査中に必要と判断された処置が加わった結果として金額が変動しているにすぎません。
あらかじめ「観察のみで終わる場合」と「生検が加わった場合」の両方の目安を把握しておくことで、窓口での想定外を減らせます。
費用の幅を生む要因は、大きく分けて次の5つです。
- 生検の有無(検査中に医師が判断する)
- 採取した組織の数
- ピロリ菌検査などの追加検査の有無
- 鎮静剤の使用の有無
- 初診・再診の区分や処方の有無

予約時に聞いた金額との差額に戸惑わないよう、生検が加わる可能性をあらかじめ見込んだ金額や決済手段を用意しておくと安心です。
現金だけでなく、クレジットカードやキャッシュレス決済に対応している医療機関も増えていますが、対応状況は施設によって異なります。
費用の変動が気になる場合は、予約の際に「生検が加わった場合の目安」を確認しておくと、当日慌てずに済みます。
保険診療の点数はどの医療機関でも同じ
胃カメラの費用について、まず押さえておきたい前提があります。
それは、保険診療で行われる検査や処置の点数は、厚生労働省の告示によって全国一律に定められているという点です。
つまり、同じ内容の検査を行った場合、どの医療機関で受けても保険診療の点数そのものは変わりません。
厚生労働省の告示では、診療行為ごとに「何点」という形で診療報酬の点数が定められており、この点数に1点あたり10円を掛けた金額が医療費の総額になります。
そこに患者の自己負担割合(一般的には3割、年齢や所得により1〜2割の場合もあります)を掛けたものが、実際に窓口で支払う金額です。
例えば、観察のみで検査が終わった場合の金額の目安として先ほど示した3,000円台後半〜4,000円台前半という数字も、この「点数×10円×自己負担割合」という計算にもとづいて算出しています。
医療機関によって窓口負担額に差が出るとすれば、それは点数そのものが違うのではなく、実施した検査・処置の内容(生検の有無や追加検査の有無など)が異なることが主な理由です。
なお、診療報酬の点数は数年に一度の頻度で改定されており、直近では2026年6月に令和8年度の診療報酬改定が施行されています。
本記事の金額の目安も、この改定後の考え方にもとづいて算出したものですが、今後の改定により点数が変更される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省の公表資料でご確認ください。
保険が使えるケース・自費になるケース
胃カメラが保険診療の対象になるかどうかは、検査を受ける「目的」によって決まります。
結論としては、胃の痛みや胃もたれ、胸やけといった症状があって受ける場合や、健康診断・がん検診で要精密検査となった場合は保険診療の対象になるのが一般的です。
一方で、症状がなく、人間ドックや任意の検査として予防的に受ける場合は自費(自由診療)になります。
この違いが生じるのは、公的医療保険制度が「病気の疑いがある症状に対する診断・治療」を対象としており、予防や人間ドックなどの健康診断目的の検査は対象外と定められているためです。

国立がん研究センターによれば、胃がん検診は症状のない人を対象に行われる予防的な取り組みであり、通常の診療とは位置づけが異なるとされています。
検診で「要精密検査」と判定された場合に改めて受ける胃カメラは、症状の有無にかかわらず診断目的の検査として保険診療の対象になるのが一般的です。
なお、保険が使えるかどうかの最終的な判断は、問診や診察の内容を踏まえて医師が行います。
同じ「胃の不快感」であっても、状況によって判断が分かれることがあるため、迷う場合は受診時に確認するとよいでしょう。
鎮静剤を使う場合の費用の考え方
鎮静剤を使用して、うとうとした状態で検査を受けたいと希望する方は少なくありません。
鎮静剤を使うと、内視鏡が喉の奥を通る際の苦痛の少ない検査を受けやすくなりますが、費用の扱いは医療機関によって異なります。
保険診療の枠組みの中で追加の点数として計算される場合もあれば、別の形で費用が設定されている場合もあるため、一律の金額を示すことはできません。
鎮静剤の使用を希望する場合は、予約の段階で費用について確認しておくことをおすすめします。
また、鎮静剤を使用した場合は検査後にふらつきが残ることがあるため、当日の運転を控えるよう案内されるのが一般的です。
鎮静剤の具体的な効果や注意点については、別の記事で詳しく解説していますので、そちらもあわせてご確認ください。
負担が大きくなったときに使える制度
生検や追加検査が重なり、1回の受診で自己負担額が大きくなった場合でも、負担を軽減できる公的な制度があります。
代表的なものが高額療養費制度と医療費控除です。
それぞれの制度を知っておくことで、費用面での不安を和らげられます。
高額療養費制度は、1か月間の医療費の自己負担額が一定の上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。
厚生労働省によれば、上限額は年齢や所得に応じて区分が設けられており、あらかじめ「限度額適用認定証」を提示しておくことで、窓口での支払い自体を上限額までに抑えられる場合もあるとされています。
医療費控除は、1年間に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合に、確定申告によって税金の一部が還付される制度です。
国税庁によれば、胃カメラなどの検査費用も、治療や診断を目的とした医療費として控除の対象に含まれる場合があるとされています。
このほか、加入している生命保険や医療保険によっては、検査や治療の内容に応じて給付金の対象になる場合があります。
ただし、給付の対象となるかどうかは契約内容によって異なるため、詳しくは加入している保険会社に個別に確認することをおすすめします。
それぞれの制度の詳しい申請方法については、別の記事で扱っていますので、あわせてご参照ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 医療機関によって胃カメラの費用は違いますか?
保険診療の点数自体は全国一律のため、同じ検査内容であれば大きな差は生じません。
ただし、生検や追加検査の有無、初診・再診の違いによって実際の窓口負担は変わります。
金額はあくまで目安として捉え、詳細は受診先の医療機関にご確認ください。
Q. 生検をするかどうかは自分で選べますか?
生検の要否は、検査中に粘膜の状態を見て医師が医学的な必要性にもとづいて判断します。
患者側の希望だけで一方的に決められるものではありませんが、不安な点があれば検査前に医師に相談することは可能です。
Q. 経鼻内視鏡と経口内視鏡で費用は変わりますか?
検査方法の違いそのものよりも、観察のみか生検ありかといった実施内容によって費用の目安は変わります。
経鼻・経口いずれを選んだ場合の費用の扱いも医療機関により異なるため、予約時に確認しておくと安心です。
Q. 人間ドックで受ける胃カメラは保険が使えますか?
症状がなく、予防目的で人間ドックとして胃カメラを受ける場合は、一般的に自費診療の扱いになります。
検査の結果、精密検査が必要と判断された場合の再検査は、保険診療の対象になるのが一般的です。
Q. クレジットカードやキャッシュレス決済は使えますか?
対応状況は医療機関によって異なります。
現金のみの施設もあれば、クレジットカードや各種キャッシュレス決済に対応している施設もあるため、費用の目安とあわせて、支払い方法も予約時に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
胃カメラの費用は、3割負担の場合、観察のみで終わったときは3,000円台後半〜4,000円台前半程度、生検が加わると8,000円台後半〜1万円前後が目安です。
保険診療の点数は全国共通の公定価格として定められていますが、生検を行うかどうかは検査中に医師が判断するため、予約の時点では最終的な金額を確定できません。
これらの金額はあくまで一般的な保険診療にもとづく目安であり、実際の負担額は診療内容や自己負担割合、初診・再診の別によって異なります。
費用の見通しが立たないことを理由に検査を先延ばしにするのではなく、目安を把握したうえで、必要と判断された検査は前向きに受けることをおすすめします。
参考文献
監修者情報
板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニック 院長
佐藤公紀(さとう こうき)医師
資格・所属学会
- 医学博士(画像診断治療学)
- 消化器病専門医
- 消化器内視鏡専門医
- 肝臓専門医
- 総合内科専門医
- 難病指定医
略歴
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科を卒業後、社会福祉法人三井記念病院で初期研修・消化器内科医員、順天堂大学医学部附属順天堂医院で消化器内科医員を務める。
- 順天堂大学大学院医学研究科で医学博士(画像診断治療学)を取得し、三井記念病院消化器内科医長を経て板橋駅前さとう消化器・内視鏡クリニックを開院。
- これまでに1万例以上の内視鏡検査・治療を術者として経験している。